研究課題/領域番号 |
18K06022
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
黒坂 哲 近畿大学, 先端技術総合研究所, 講師 (30625356)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アルギニル化 |
研究実績の概要 |
アルギニル化は、アルギニン転移酵素(ATE1)のはたらきによって、タンパク質にアルギニンがペプチド結合する翻訳後修飾である。Ate1ノックアウトマウスが致死であることから、アルギニル化が個体発生に必須であることは明らかである。また、コンディショナルノックアウトマウスの解析から、正常な生殖能力にアルギニル化が必要であることも示されているが、雌性配偶子の形成におけるアルギニル化の役割についてはこれまでに報告が皆無である。本研究の目的は、細胞骨格タンパク質とそのアルギニル化が減数分裂時の紡錘体形成や染色体分配をどのように制御しているのか、さらにはその他のタンパク質のアルギニル化が配偶子形成にどのように関与しているのかを調べることで、雌性配偶子形成のメカニズムの一端を明らかにし、動物生産や生殖医療に貢献する成果を得ることである。もし減数分裂における主要タンパク質の機能がアルギニル化により制御されているのであれば、アルギニル化を人為的に制御することで雌性配偶子の形成およびその発生能を向上させる可能性を提示することができる。このように、本研究は、これまでにない視点から配偶子形成のメカニズムに迫り、動物生産や生殖医療への貢献を目指すものである。本研究の遂行にあたり、加齢マウス、アルギニン転移酵素ノックアウトマウスおよびコンディショナルノックアウトマウスを使用する必要があり、平成30年度からその導入を進めてきたが、平成31年度・令和元年度にはコンディショナルノックアウト以外のマウスの導入が完了し、現在はサンプリング及び解析を進めている。また、始原生殖細胞からの生殖細胞の体外作製も必要となるので、その実験系の立ち上げも行なっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成31年度は、本研究の遂行に必要なマウス系統の導入を進めるとともに、当研究室において確立されていなかった技術である始原生殖細胞からの卵子の体外作製の立ち上げを行なった。研究に必要な量のアルギニン転移酵素ノックアウトマウスの導入が昨年度末の構想よりも遅れたが、コンディショナルノックアウトマウス以外のマウス系統については導入が完了し、それらの卵子の解析が進行中である。資源生殖細胞からの卵子の体外作製は当初考えていたよりも難航しており、現時点では解析を行うに至っていない。以上のことから、進捗状況はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、加齢マウスおよびアルギニン転移酵素ノックアウトマウスを用いて、以下のように研究を進める。加齢マウス卵子および卵巣におけるアルギニン転移酵素の発現および減数分裂の進行を若齢マウスと比較する。さらには、アルギニン転移酵素を導入することにより加齢マウス卵子の質が向上するかを調べる。それと並行して、アルギニン転移酵素ノックアウトマウス胎子由来の始原生殖細胞からの卵子の体外作製を行い、その過程における表現型の有無を調べ、表現型がみとめられた場合は、アルギニン転移酵素を導入することによりその表現型がレスキューされるかを調べる。始原生殖細胞からの卵子の体外作製は現在難航しているが、二次卵胞に至るまでの培養には成功しているため、卵子の作製に至らない場合は、二次卵胞までのステージにおいて解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の1477円が生じた理由は、その金額で購入可能かつ年度末までに必要な物品がなく、この金額を次年度に繰り越して使用することが研究のために有効かつ適切であると判断したためである。令和2年度は、当初の交付予定額にこの1477円を加えた額を適正に使用する。
|