研究実績の概要 |
我々は、フォワード・ジェネティクスの手法を用いて覚醒時間の顕著な短縮を示すSleepy家系を樹立した(Funato, Miyoshi et al., Nature 2016)。Sleepy変異 家系マウスは、AMP-activated kinase-related kinase (AMPK-RK)に属するSik3遺伝子に変異をもち、典型的な表現型として覚醒時間の短縮を示す。一方、 Sleepyマウスにおいては、過眠に加えて顕著な体重増加がその表現型として観察されている。細胞内エネルギーセンサーとしてのAMPKの機能について多くの報告があるのに対して、AMPK-RKの生理的役割については、ほとんど解明されていない。先行研究で、SIK3の機能を欠損させた個体では、エネルギー負荷に対する耐性をもつことが報告されているが、Sleepy家系のマウスは、常餌飼育下でも若齢期から顕著な肥満が見られる。SIK3ノックアウトマウスと体重の推移が異なることから、変異型SIK3は、睡眠覚醒のみならず摂食行動もしくは代謝制御においても未知の機能を持つことが示唆された。本研究では、睡眠覚醒行動および肥満の表現型に関わる摂食行動やエネルギー代謝におけるSIK3の生理機能を明らかにするため、Cre-loxPシステムを用いて特定の組織、細胞集団でSleepy遺伝子変異を惹起できるような遺伝子改変マウスを作製し、Sleepy変異Sik3の個体における生理機能の解明を試みた。
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