研究課題/領域番号 |
18K06027
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
伊藤 禎洋 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (30345722)
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研究分担者 |
長友 啓明 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (30746813)
神沼 修 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80342921)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 炎症の系統差 / 血清アミロイドP成分 |
研究実績の概要 |
先行研究において、アミロイドーシス解析の目的で、アミロイドに必ず含まれる微小成分、血清アミロイドP成分(SAP;現在では表記が変わりApcs)の遺伝子破壊をES細胞(129/Sv//Ev系統)で行い、SAPノックアウトを作製した。このマウスを同腹の野生型マウスと共に、エマルジョン刺激を用いて、脾臓にアミロイドを形成させた。当初、同腹の野生型マウスに比較して、有意にアミロイド沈着の遅れが見られたが、1月後には、差が無くなってしまった。この結果は、論文Serum Amyloid P Component Enhances Induction of Murine Amyloidosisで発表した。更に、このSAPノックアウトは、12か月齢を過ぎると有意に抗核抗体値が上昇したが、遺伝子背景をC57BL/6NからC3H/Heに変えると有意差は消えてしまった。この結果は、論文Avoiding the effect of linked genes is crucial to elucidate the role of Apcs in autoimmunityで発表した。 SAPは、マウスの急性期炎症タンパク質である。このノックアウトマウス(遺伝子背景C57BL/6N)は、病原菌に感染していないのに、自然免疫が亢進して、体内で炎症が生じ、自己抗体を産生する事態に陥っている事を深く示唆している。 このノックアウトマウス凍結胚を融解して、ホモ個体を作成した。14か月齢を過ぎると皮膚の潰瘍が見られる個体が現れ、16か月齢より死亡する個体が現れた。SAPノックアウトマウス(遺伝子背景C57BL/6N)ホモの雄1個体の全ゲノムシーケンスを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、抗核抗体価の上昇を指標として、C57BL/6系統の遺伝子背景(Apcs-/-; 129/Sv//Ev × C57BL/6N)に存在する129/Sv//Ev領域{第1染色体;D1Mit36(76.73cM)~D1Mit115(82.78cM)}の免疫に関係する遺伝子群をランダムに20遺伝子、ゲノム編集法で破壊する予定でいた。しかし、論文Complete overview of protein-inactivating sequence variations in 36 sequenced mouse inbred strainsより、C3H/Heマウスは、IL1α遺伝子上のSNPのため、LPS等の感染刺激に対して耐性であると解った。このことにより、C3H/He系統の遺伝子背景では、炎症のシグナルが入らないために抗核抗体値上昇が起きないのであろうと深く示唆された。従って、同じように、ゲノム編集法で破壊した遺伝子が、抗核抗体価の上昇に関わる遺伝子であるか否かは判明するが、抗核抗体値上昇の原因であるとは結論出来ないことに思い至った。 まず、自然免疫亢進の原因と自己抗体獲得の要因を明らかにすることに研究方針を転換した。
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今後の研究の推進方策 |
このSAPノックアウトマウス(遺伝子背景C57BL/6N)の自然免疫亢進の原因と自己抗体獲得の要因を明らかにする為に、2ヶ月齢、6ヶ月齢、10ヶ月齢、14ヶ月齢のSAPノックアウトマウス(遺伝子背景C57BL/6N)と同腹の野生型マウスまたは同月齢のC57BL/6Nから、肝臓、脾臓、血液、皮膚よりRNAを抽出して、炎症に特異的な遺伝子について、発現解析を行う。まずはqPCRを行い、発現に変化が表れる月齢を同定した後、アレイ解析又はRNA-Seqで詳細に解析を行い、自然免疫亢進と自己抗体獲得のときに特異的に変化する炎症に特異的な遺伝子群を発見することを目指す。 その発見した特異的な遺伝子群をゲノム編集法で、遺伝子破壊した細胞又はマウスを作製して確認実験を行う事を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究方針転換のため、マウス個体が老化するのを待たなければならなかったからである。 2ヶ月齢、6ヶ月齢、10ヶ月齢、14ヶ月齢SAPノックアウトマウス(遺伝子背景C57BL/6N)と同腹の野生型マウスまたは同月齢のC57BL/6Nから、肝臓、脾臓、血液、皮膚よりRNAを抽出して、炎症に特異的な遺伝子について、発現解析を行う。 自然免疫亢進と自己抗体獲得のときに特異的に変化する炎症に対して特異的な遺伝子を発見することを目指す。その発見した特異的な遺伝子をゲノム編集法で、破壊した細胞又はマウスを作製して、確認実験を行う。
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