研究課題/領域番号 |
18K06028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椛嶋 克哉 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (30615422)
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研究分担者 |
高林 秀次 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (70372521)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シリアンハムスター / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / 生殖工学 |
研究実績の概要 |
実験動物としてのシリアンハムスターは、冬眠動物としての興味深い特性を備えるとともに、生殖生物学の分野で用いられてきた経緯から生殖工学技術に関する学術的情報も蓄積されている。そこで、本研究ではシリアンハムスターに着目し、冬眠動物におけるゲノム編集個体作製技術を確立すべく検討を行った。 TAKE法(Kaneko T. and Mashimo T., PLOS ONE, 2015)によるゲノム編集シリアンハムスターの作出は、以下のように行った。膣分泌物の有無により雌の性周期をチェックし、排卵日当日に過排卵を誘起した。3日後の夕方に雄と1対1で同居させて交配し、翌日、膣分泌物中に精子が確認された個体より胚を回収した。胚の回収にはM199TE培地(Yamauchi Y. et al., Biol. Reprod., 2002)を用い、卵管灌流により行った。エレクトロポレーションによってCRISPR/Cas9システムを導入後、直ちに胚移植を行った。シリアンハムスターは、膣栓ではなく、膣分泌物中の精子の有無によって交配の成否を確認する。このため、偽妊娠雌ではなく、妊娠雌(自然排卵)をホストに用いた。妊娠雌に胚移植した場合でも、体外操作したシリアンハムスター胚の発生率が低いためか、これまでに得られている産仔は7-10匹程である。過剰妊娠等の問題は生じていない。また、自然分娩するため里親を用意する必要もない。産仔の13-50%の割合で変異個体が得られている。体外胚操作は赤色光下で行い、とくに顕微鏡ランプ(白色光)の遮光に注意した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中に所属機関を異動したため、新たに実験系を立ち上げる必要があった。シリアンハムスターはSPF動物として供給されているが、所属機関のSPFエリアに飼育スペースを確保することができず苦労したものの、クリーンエリアに飼育スペースを確保することができた。必要な設備を導入することもできている。COVID-19の影響は懸念されるものの、1年間の期間延長が認められたことで、計画を完了できる目途は立ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
TAKE法によるゲノム編集シリアンハムスターの作出について、論文としてまとめる。系統保存のための生殖工学技術については、ラットの手法も参考にして、胚・精子凍結の技術確立を進める。ラットでは、物理的刺激による人工偽妊娠誘起法を用いている。シリアンハムスターは、妊娠雌をホストとして胚移植を行っているが、自然妊娠由来の産仔も得られてしまう問題がある。シリアンハムスターは着床数が少ないと妊娠が継続しない傾向があるため注意する必要があるが、移植胚数を増やす等して偽妊娠雌への胚移植についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に所属機関を異動したため、新たに実験系を立ち上げる必要があった。マウスやラットに比べると一般的な実験動物ではないことから、飼育スペースの確保に苦労し、動物実験や組換えDNA実験の承認手続きに時間を要したため残金が生じた。SPFではなくクリーンエリアに飼育スペースを確保することができ、1年間の期間延長も認められたため、残金については令和2年度に実施することができなかった計画に使用する。
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