昨年度までに、冬眠動物のシリアンハムスターにおいて、in vitro受精卵エレクトロポレーション法によるゲノム編集個体作製技術を確立した。過排卵処理後に交配すると受精卵が得られない問題が度々生じていたが、ラットの手法を用いた人工授精により大量の新鮮精子を子宮内に注入することで、安定して1匹から40個程度の受精卵が得られるようになった。本法では極めて高効率にKO個体が得られることから、冬眠候補因子のF0世代での高速スクリーニング等に有用であると考えられる。 ゲノム編集シリアンハムスターの系統保存法としては、胚凍結について検討した。凍結融解胚由来の産仔を容易に判別するため、チロシナーゼKOシリアンハムスター(アルビノ)を系統化した。兄妹交配で維持し、現在F5世代まで近交化を進めている。これまでに、凍結融解後の胚の生存性は確認していたが、移植後に産仔が得られることも確認した。しかし、移植胚あたりの産仔率は4.3%(2/43)と低率であった。凍結ステージは2細胞期胚とし、凍結保存液はDAP213、PEPeSどちらも使用可能であったが、融解後スクロース溶液からM199TE培地に移すと、空胞様の形態的な異常が観察された。スクロース溶液後の培地をPB1やmR1ECMにすると、そうした形態的な異常はみられなかった。胚移植後の成績を比較したところ、mR1ECM(7.7%)よりもPB1(41.7%)の方が高率であり、移植胚あたりの産仔率が大幅に向上した。PEPeSは、ラット胚の簡易ガラス化法に用いられる凍結保存液である。ラットの手法を用いることで、シリアンハムスターにおいても、凍結チューブを用いた簡易ガラス化法による効率的な個体復元が可能であることが明らかとなった。
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