研究課題/領域番号 |
18K06031
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
由利 俊祐 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (10800881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 臓器欠損モデル / キメラ / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
再生医療研究において、移植用臓器の不足を補うために様々な研究が行われているが、複数種の細胞と複雑な三次元構造からなる臓器を in vitro で構築することは極めて難しい。一方で、in vivo で臓器を構築することのできる胚盤胞補完法では、これまでに、ラット-マウスの異種キメラを用いた方法において、作れる臓器 (膵臓、胸腺) と作れない臓器 (腎臓など) があることが報告されている。本研究では、胚盤胞補完法においてどの臓器が異種間キメラで補完できるのか、また、できない臓器はどうすれば異種間キメラで臓器を補完できるようになるかという問題を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、臓器欠損モデルを簡便に作成するため、遺伝子欠損の表現型に依存せず、細胞を殺すシステムを用い、様々な臓器欠損モデル動物を作り出すこととし、これまでに異種間キメラで臓器の作成が報告されていない臓器はどうすればキメラ内で欠損臓器を幹細胞によって補完できるかを調べることとした。 これまでに、in vitro の実験において、新規の細胞を殺すシステムで目的の細胞を殺すことができることが確認された。現在、この方法で臓器欠損モデルをも作成することが可能であるかを調べている。また意外なことに、異種キメラにおいて、異種細胞は同種キメラの場合とは異なり、臓器に対する寄与率が不均一であり、寄与しやすい臓器と寄与しにくい臓器あることが判明した。腎臓はその中でも特に異種の細胞が寄与しにくく、このことが腎臓欠損モデルで異種の腎臓をキメラ体内で作成できないことへの一因となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、in vitro の実験において、新規の細胞を殺すシステムで目的の細胞を殺すことができることが確認された。現在、この方法で臓器欠損モデルをも作成することが可能であるかを調べている。 また、異種キメラを用いた胚盤胞補完法において、腎臓ができなかった理由が明らかになりつつあり、今後はこの原因を解決することを目指した実験に焦点を当てて研究を行うことで、異種キメラにおいて腎臓を作成することが実現可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro の実験系において効果が確認された新規の細胞を殺すシステムで既知の臓器欠損モデルを作成することが可能であれば、続いて、臓器特異的なプロモーターを用いることで、様々な臓器欠損モデルを作成していきたいと考えている。 また、異種キメラを用いた胚盤胞補完法において、腎臓ができなかった理由が明らかになりつつあり、今後はこの原因を解決することを目指した実験に焦点を当てて研究を行う。具体的には、発生期を徐々に遡っていき、いつから異種の細胞が腎臓の細胞系譜に寄与することができなくなったかを調べる。次に、そこで働く分子機構に着目して、異種と同種の細胞の分子機構に差異があるかを調べ、もし差異があれば、その差異をなくすことで、異種も同種と同様の寄与パターンにすることが可能であるかを調べていきたいと考えている。腎臓におけるメカニズムを明らかにし、さらに、他の作成できない臓器も、腎臓と同様の理由であるかを調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
異種キメラにおいて、異種の細胞が予想外に腎臓へと寄与しにくいという結果が得られたため、物品費の支出が当初の予定より少なかった。異種キメラを用いた胚盤胞補完法で作れない臓器を作るためには、計画にある臓器欠損モデルを作成する他に、なぜ異種細胞の局在が臓器ごとにばらつくのかを調べる必要が生じたため、解析に必要な消耗品の購入費用に充てる予定である。
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