再生医療研究において、移植用臓器の不足を補うために様々な研究が行われており、in vivo で臓器を構築することのできる胚盤胞補完法が着目されている。 これまでに、ラット-マウスの異種キメラを用いた場合は、作れる臓器 (膵臓、胸腺) と作れない臓器 (腎臓など)があることが報告されている。本研究課題は、胚盤胞補完法により臓器を作るため必要な条件を明らかにすること、また胚盤胞補完法により作られていない臓器を作り出すことを目的としている。 まず、本研究課題において、様々な臓器欠損モデルを簡便に評価することができる、『逆・胚盤胞補完法』を開発した。また、昨年度までに樹立した新規臓器欠損モデルは前年度のin vivoの実験系で完全には臓器が欠損できないことがわかったことから、本年度はジフテリア毒素A(DTA)や発生に重要な遺伝子を過剰発現するシステムを用いることで、目的の細胞を確実に欠損することができるシステムを樹立した。それらのシステムを用いて、腎臓、肺、心臓、腸などの様々な臓器において、臓器欠損モデルを作製し、『逆・胚盤胞補完法』によりそれぞれのモデルを評価したところ、腎臓、肺においてはほぼ完全に野生型細胞からなる臓器を構築することができた。 また、肺、腎臓欠損モデルを用いて、胚盤胞補完法により臓器を作り出すための条件を調べたところ、野生型細胞が一定数存在することが重要であること、また、異種の細胞の寄与は臓器ごとに変わっており、このことが、胚盤胞補完法により異種の臓器を作り出すことができない原因であることが明らかとなった。
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