研究課題/領域番号 |
18K06034
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
川田 耕司 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20374572)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 濾胞ヘルパーT細胞 / SAMP1 / 老化モデル |
研究実績の概要 |
【背景】濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)は、抗体産生を制御するT細胞サブセットであり、自己免疫疾患モデルマウスの病態形成において重要な役割を担うことが報告されている。また、マウスでは加齢により、本細胞と類似した表現型を示すT細胞が増加することが報告されており、免疫老化の一つの特徴と考えられている。本年度は、ガラクトース誘発亜急性老化モデルマウスおよび老化促進モデルマウスSAMP1の免疫老化研究における有用性について検討するため、両モデルにおけるTfh様細胞の挙動について検討した。C57BL/6J マウスにD-ガラクトース100 mg/kg/day を8週齢より3ヶ月間皮下投与することにより作製した老化モデルにおいて、脾臓におけるTfh様細胞の割合が対照群と比較して有意に増加する結果となり、これらの細胞ではCD153陽性細胞の割合が増加していた。これは正常老化マウスについて実施した解析結果と類似していた。また、4-40週齢のSAMP1においても、本細胞の割合が対照として用いたSAMR1に対して有意に増加しており、高いCD153陽性率を示した。これらの結果から、本研究で用いた2つの老化マウスモデルが免疫老化研究において有用である可能性が示された。さらにSAMP1マウスにおいては、CXCR5の発現が低く、PD-1を高発現するT細胞の顕著な増加が認められた。この細胞はTfh様細胞と同レベルのICOSを発現しており、B細胞との相互作用能を有することが示唆される。また本細胞もTfh様細胞同様、CD153陽性細胞を効率で含んでおり、老化との関連について詳細な検討が必要と考えられる。また、SAMP1マウスはT細胞依存的特異抗体産生能の低下が若齢期より認められることが報告されているため、これらの細胞の抗体産生誘導能についても検討すべきと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究代表者が現職へ転任となり、研究環境の整備等に時間を要したため、課題の進捗に若干の遅れを生じたが、本年度に予定していた老化モデルマウスにおける基礎的解析は終了しており、進行は概ね順調である。本年度に予定していたが実施できなかった抗生物質投与マウスの解析については、既に解析を開始しており次年度初めには結果が得られる見通しである。
|
今後の研究の推進方策 |
主要な老化モデルにおいて正常老化と類似したTfh細胞の挙動が観察され、免疫老化研究に有用であることが示されたため、今後は数種の抗生物質投与によって腸内細菌叢を減少させたマウスで同様の解析を行い、免疫老化に伴うTfh細胞の数的変化と腸内細菌叢の直接的な関連について検討する。また、これらのマウス糞便の菌叢解析および責任菌種の分離を並行して実施し、老化によるTfh様細胞増加に影響を及ぼす腸内細菌種について検討する。 また特にSAMP1では、若齢期から特異抗体の産生に障害があることが報告されているものの、免疫学的特性が十分明らかとなっていないため、各T細胞サブセット(Th1、Th2、Th17、Treg)の数的変動、外来抗原刺激に対するTfh細胞の反応性等、基礎的な免疫学的特性について検討する予定である。
|