濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)は、抗体産生を制御するT細胞サブセットであり、自己免疫疾患モデルマウスの病態形成において重要な役割を担うことが報告されている。また、マウスでは加齢により、本細胞と類似した表現型を示すT細胞が増加することが報告されており、免疫老化の一つの特徴と考えられている。本研究では、これまでにガラクトース誘発亜急性老化モデルマウスにおいても、正常老化マウスと類似したメモリー形質を有するT細胞の増加、上記Tfh様細胞を含むT細胞サブセットの割合の増加が認められることを明らかにしており、さらにこれらの数的変化が抗生剤の経口投与によって顕著に抑制されることを示した。本年度は、抗生剤投与マウスの腸内の優位菌種であるLactobacillus murinusを経口投与した老化モデルマウスについて解析を行い、T細胞サブセットの数的変化に対する本菌の関与について検討した。 C57BL/6J マウスに D-ガラクトース 100 mg/kg/day を8週齢より3ヶ月間皮下投与することにより作製した亜急性老化モデル、同時にLactobacillus murinusを3日ごとに2X10^8経口投与した老化モデルの脾細胞についてFACS解析を実施し、脾臓におけるメモリーT細胞およびT細胞サブセットの構成を評価したところ、L.murinus 投与群では上記T細胞の構成変化が顕著に抑制される結果となり、特にT細胞を中心とした免疫系の加齢性変化に対し、本菌が抑制的な作用を有している可能性が示された。
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