研究課題
牛のDOK遺伝子に関する論文がほとんどないため、GenBankより牛のDOK遺伝子を検索し、DOK1、DOK2およびDOK3さらに内在性コントロールとしてβ-actin遺伝子のPCRおよびreal-timePCRの各プライマーを設計、作製した。これらプライマーが使用可能であるか、健康な牛の血液よりリンパ球を採取後、RNAを抽出し、RT-PCRを行った。DOK1およびDOK2に関しては目的の位置にバンドが検出されたが、DOK3は非常に弱かった。次に牛白血病由来細胞株であるKU-1を用いてRT-PCRを行ったところ、DOK1は健康な牛と同様に検出されたが、DOK2はほとんど検出されなかった。また、DOK3の発現は弱く、健康な牛とほぼ同じレベルであった。T細胞が主にDOK1およびDOK2、B細胞がDOK1およびDOK3、骨髄系細胞はDOK1、DOK2およびDOK3をすべて発現するとされている。KU-1株はB細胞由来の腫瘍細胞株であるため、DOK2と反応しなかったものと思われた。一方、屠場由来の牛白血病の腫瘍細胞ではDOK2が健康牛と比較し弱いものの発現が確認された。また、DOK3の発現レベルも、健康牛および牛白血病由来細胞株と比較し、高発現のものもあり、牛における各血液細胞におけるDOK遺伝子の発現レベルは検討する必要があると思われた。Western blot法を用いた健康牛血液細胞のDOKのタンパクレベルの解析では、市販の各抗体がアミノ酸配列から牛DOKタンパクと交差することが予想されているにもかかわらず、検出できなかった。他の市販抗体でも同様であり、タンパクレベルでの解析のためには、牛のDOKタンパクを認識する抗体が必要である。想定されるアミノ酸配列より、ペプチドを合成し、抗体を作製することも検討課題である。
3: やや遅れている
平成30年度は、牛のDOK遺伝子の発現の意義等に関する論文がほとんどないことから、マウスおよびヒトのDOK遺伝子解析技術を応用したがDOK3の発現の弱さ等、発現レベルで解析しなければならないことがわかった。また、市販のマウスおよびヒト用抗DOK抗体では検出できない可能性もあるため今後検討しなければならない。
ヒトおよびマウスでは、血液細胞にDOK1,DOK2およびDOK3が発現しており、T細胞は、DOK1およびDOK2、B細胞は、DOK1およびDOK3、顆粒球はすべて発現していることがわかっている。牛も本研究にて同様であることは推察されたが、DOK3に関しては発現が弱く、技術的なものであるのか、実際にそうなのかは明らかではない。そこでFACS法あるいはMACS法を用いてT、Bおよび顆粒球を分離しDOK1、2および3の発現を解析する必要がある。また、タンパクレベルの解析には牛のDOKタンパクを良好に認識する抗体が必要であり、その作製を検討している。
牛におけるDOKの発現がヒトあるいはマウスと同様と想定していたが、健康な牛でのDOK発現をとくにDOK3で検討する必要がでてきた。次年度に、市販されている数社の牛を認識するDOK3抗体の検討と、交差しない場合はペプチド抗体を作製する必要があるため、次年度分の助成金と合わせて使用する予定である。
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