研究課題
屠場由来の腫瘍細胞について、まずBLV感染の有無について検索した。腫瘍細胞10例のうち1例のみ陰性であった。BLV感染が確認された材料のDOK遺伝子の検索では、DOK2遺伝子の発現が健康牛にくらべて低下しているにもかかわらず、BLV陰性肉腫ではDOK2の発現が高かった。マウスのDOK遺伝子に関する報告では、免疫細胞によって各DOK遺伝子の発現は異なるとされ、T細胞は主にDOK1およびDOK2、B細胞はDOK1およびDOK3、骨髄系細胞はDOK1、DOK2およびDOK3をすべて発現すると報告されている。そこで健康牛における末梢血リンパ球をCD21(成熟B細胞)の抗体を用いて、CD21陽性分画とCD21陰性分画に分け、DOK遺伝子発現レベルを比較したところ、マウスで報告されているのと同様、CD21陽性分画では、DOK2遺伝子の発現は低い値を示し、CD21陰性分画では、逆にDOK2は高い値を示した。このことはマウスで示された発現パターンとウシも同様と示唆される。牛白血病由来細胞株であるKU-1では極端なDOK2遺伝子の抑制が観察されるが、野外のBLV腫瘍細胞でも同様の値を示すものがあることが確認され、BLV感染腫瘍株では、正常のB細胞より発現が低下していることが明らかとなった。一方、DOK1についても低下しており、各細胞でのBLV発現レベルとの関連についても詳細に解析する必要があると考えられる。タンパクレベルの解析では、ウェスタンブロット法によってウシ末梢血白血球分画よりDOK1およびDOK2を微弱ではあるが検出可能な市販抗体を得ることができたが、DOK3に関しては昨年同様ほとんど解析可能な抗体を得ることができなかった。
3: やや遅れている
ウシにおけるDOK1、DOK2およびDOK3の血液免疫細胞での各遺伝子発現レベルが、従来報告されてきたマウスとほぼ同じであることが確認できたことは大きな成果であったが、タンパクレベルの解析では、昨年と同様、解析可能なDOK3抗体を得ることができなかった。
ウシにおけるDOK1、DOK2およびDOK3の血液免疫細胞でのタンパクレベルの検索は、良い抗体が必要である。DOK1およびDOK2については微弱ながら解析可能な抗体が得られ、BLV由来腫瘍細胞株および野外材料についてタンパクレベルも含めて解析する。DOK3に関しては市販の抗体では検出できず新たに抗体を作製する必要があるが、長時間を要することが考えられるため、検索レベルをまず遺伝子の発現とする。ウシにおける正常なDOK遺伝子発現レベルを、例数を増やし解析するとともに野外材料についても解析をさらに進める。
ウシにおけるDOKの遺伝子およびタンパクレベルの解析において、とくにDOKタンパク検出確認作業に時間がかかり、新たな実験系を立ち上げることができなかった。そのため物品費等の支出が少なかった。次年度は、タンパクレベルでの検索についてはDOK3をはずして、正常牛および野外材料とともに例数を増やし広範囲に検討予定である。また、以上の遅延により研究発表ができなく、それに伴う旅費の支出がなかった。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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