研究課題/領域番号 |
18K06038
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
渡邉 大介 北里大学, 理学部, 講師 (00260175)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | disease model animal / transgenic rescue mice / conditional knockout / inversin / polycystic kidney / cilia / left/light asymmetry / c-kit |
研究実績の概要 |
本研究の目的は我々が開発したコンディショナルレスキュー法などの新規の技術を用いることより、Inv遺伝子の左右軸決定や腎臓形成などにおける生理学的な機能を明らかにすることである。これらの研究で得られる知見はヒトのINV遺伝子変異により生じる形態形成異常や多発性嚢胞腎の原因の解明や治療に役立つものと考えられる。さらに本研究においてコンディショナルレスキュー法を改良することにより、今後より多くの遺伝子の機能解析に寄与することが期待される。 2019年度の研究では主にレスキュー遺伝子の発現をGFPとDsRedの2つの蛍光タンパク質の蛍光からリアルタイムで観察可能な第2世代のベクター系の開発を中心に研究を進め、実際にこれらのベクター系をもちいて第2世代のコンディショナルレスキューマウスの作製を行った(九州大学との共同研究ならびに文部科学省先端モデル動物支援プラットフォーム支援)。さらにこれらのベクターを導入された細胞をもちいてInv遺伝子の機能解析をin vitroにおいても進め、その発現の切り替わりの様子をタイムラプス撮影し、その有効性を確認した。またコンディショナルレスキュー法の汎用性を示すため、マウスの造血幹細胞や始原生殖細胞(PGC)ならびにメラノサイトの増殖や移動において重要な働きをしているレセプター分子であるKit遺伝子とそのリガンドであるSl遺伝子に対する第2世代のコンディショナルレスキューマウスの作成を開始し、Sl遺伝子に関してはその変異マウスの特徴であるメラノサイトの移動障害がレスキューされ、毛色が黒色化したコンディショナルレスキューマウス系統を得ることに成功した(文部科学省先端モデル動物支援プラットフォーム支援)。またSl遺伝子のレセプターであるKit遺伝子に対するコンディショナルレスキューマウスの作成も同様に開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回作成した第2世代のコンディショナルレスキューマウス作成ベクターはin vitroの実験において期待通りの発現や蛍光色素の切り替わりが確認された。また実際にこのベクターをもちいることによりInv遺伝子の表現型をレスキューした第2世代のコンディショナルレスキューマウスを得ることに成功し、現在さらにSl遺伝子やc-kit遺伝子に対するコンディショナルレスキューマウスも作成中である。当初これらのコンディショナルレスキューマウスの作成にはより多くの時間が必用と考えられていたが、文部科学省先端モテル動物支援プラッホームプロジェクトに採択され、そのマウス作成の支援を得たことから予定より順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作成を終えたInv遺伝子に対する第1世代のコンディショナルレスキューマウスならびに遺伝子発現の有無を蛍光タンパク質の蛍光で確認可能な第2世代のコンディショナルレスキューマウスとP0-Creなどの組織特異的Creマウスとの交配により得られた組織特異的Inv遺伝子欠失マウスの表現型を解析することにより、生後致死性のため困難であったInv遺伝子の成体組織における機能を解析する。また平行して、生殖細胞や血液細胞の増殖や移動において重要な働きを有したリガンドとレセプターであるSteelならびにKit遺伝子に対するコンディショナルレスキューマウスを引き続き作成し、これらの分子のより詳細な機能解析を進めることにより、我々が開発したコンディショナルレスキュー法の遺伝機能解析手法としての有効性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックマウスの作成を中心に進めたため、未だ得られたマウスの表現型の解析に必用とされる試薬ならびに機器の一部が未購入であり、今後作成される多くのトランスジェニックマウスの解析や運搬 系統維持 保存などに本年度より多くの費用が必用とされるため。
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