研究課題/領域番号 |
18K06042
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研究機関 | ヤマザキ動物看護大学 |
研究代表者 |
梅村 隆志 ヤマザキ動物看護大学, 動物看護学部, 教授 (50185071)
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研究分担者 |
高須 伸二 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 主任研究官 (00597891)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Notch4 / Nrf2 |
研究実績の概要 |
本研究目的は、結節性肝再生モデルを用いて持続性肝再生シグナルにおけるON/OFF制御の実態とそこに関わるNotchシグナル制御機構を介したNrf2の関与を明らかにすることである。本研究では、ピペロニルブトキサイド(PBO)を長期間マウスに投与することで得られる持続性再生性病変の肝再生性結節を対象として、Nrf2 -/-マウスとその野生型で観察されるシグナルの差異がNrf2制御下シグナルの候補分子であると考え、そこにON/OFF制御因子ならびにNotchシグナル関連遺伝子群がどのように包含されているのかを解析する。本年度は、Nrf2存在下における持続性肝再生過程におけるON/OFF制御の実態を検討する目的で、野生型マウスにPBOを投与して作成した肝再生性結節と肝腫瘍の網羅的遺伝子発現解析比較から明らかとなった活性化シグナルのうち、Notch4およびCcne1の遺伝子発現解析をRT-PCR法により実施した。その結果、Ccne1は肝再生性結節及び肝腫瘍で発現上昇する傾向が認められた。一方、Notch4は肝腫瘍で高い傾向が認められた。そこで、肝腫瘍組織切片上でNotch4およびCcne1のin situハイブリダイゼーションを行った結果、Ccne1は肝細胞に発現が認められたのに対して、Notch4は血管内皮細胞様の細胞に発現が認められた。Nrf2によるNotchシグナル制御を介したON/OFF制御機構はこれまで肝部分切除による急性再生過程でその存在が予想されている。肝腫瘍はOFF制御が破綻している持続性増殖性病変であることを考慮すると、本研究結果は今後実施予定のNrf2非存在下の遺伝子発現解析結果とともに、持続性増殖シグナルのON/OFF制御の存在ならびにそこに係るNrf2/Notchシグナル経路の解明に役立つものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Nrf2存在下における持続性肝再生時のON/OFF制御の実態を検討する目的で、野生型マウスの肝再生性結節ならびに持続性増殖性病変であり、OFF制御機構が破綻していることが考えられる肝腫瘍におけるNotch4とCcne1の遺伝子発現をRT-PCR法ならびに後者においてはin situハイブリダイゼーション法を用いて検討した。その結果、Ccne1は両病変において発現上昇する傾向が、Notch4は肝腫瘍で発現が高い傾向が認められ、主に血管内皮細胞様の細胞に発現することを明らかにした。しかし、Nrf2 -/-マウスの遺伝子解析が進んでおらず、肝再生性結節内のON/OFF制御機構が腫瘍とは異なる可能性は把握しつつも、その制御に係るNotch経路を介したNrf2の関与に関しては十分な知見を得るに至っていない。現在の進捗状況は、Nrf2欠損下における持続性肝再生時のシグナル変化の検討として、Nrf2 -/-マウスにPBOを投与した結果生じる肝再生性結節に加えてPBO投与群の非結節部位及びPBO非投与群の肝臓をマイクロダイセクションにより切り出し、サンプルのRNA品質チェックを実施した。マイクロアレイ解析を実施するためのRNA収量および品質が確保されたサンプルを収集するのにやや時間を要したものの、サンプル収集はおおむね終了している。今後は得られたサンプルを用いて、網羅的遺伝子発現解析を行い、持続性再生シグナル活性化状態におけるNrf2欠損による影響を解析して、野生型と比較する予定であり、持続性肝再生シグナルにおけるON/OFF制御機構の実態ならびにそこへのNotchシグナルを介したNrf2の関与の解明を目指す。以上より、当初計画していた研究目的と研究計画に対して、一部課題はあったもののおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、野生型マウスを用いて作成したON/OFF制御の実態が不明な肝再生性結節ならびにOFF制御機構の破綻が考えられる肝腫瘍を解析した結果、Notch4は肝腫瘍で発現が高い傾向が認められ、主に血管内皮細胞様の細胞に発現することを見出した。本年度は、遺伝子発現解析を主に凍結サンプルにより実施しており、in situハイブリダイゼーションによる解析も凍結切片を用いて行った。一方、形態観察に有用なホルマリン固定サンプルに関しては、従来の操作手順では明瞭な陽性シグナルが観察できないなどの課題も残った。我々が樹立した結節性肝再生モデルは、結節内の病理形態学的な情報が重要であることから、ホルマリン固定サンプルでの観察が必須であり、その標本を用いて遺伝子発現細胞の局在を詳細に観察することは大変重要であると考えられる。今後、ホルマリン固定サンプル標本を用いたin situハイブリダイゼーション法の操作手順を検討して、最適条件の探索を目指す。Nrf2欠損下における持続性肝再生時のシグナル変化の検討では、Nrf2 -/-マウスにPBOを長期間投与して認められた結節性病変が肝再生性結節であることを病理形態学的に確認し、網羅的遺伝子発現解析を実施するためのサンプル収集を実施した。今後は、これまでに収集したサンプルを用いてNrf2 -/-マウスにおける肝再生性結節の網羅的遺伝子発現解析を実施し、野生型マウスにおける持続性再生シグナル変化と比較することで、Nrf2欠損による影響を解析する。加えて、in situハイブリダイゼーションによる部位特異的な発現解析を実施することにより、持続性再生シグナルにおけるON/OFF制御機構の実態ならびにそこに係るNotchシグナル変動の生物学的意義とNrf2との関連を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入した試薬等が予定していた価格より安価に購入できたため、来年度に必 要な試薬等の購入にあてたい
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