研究課題/領域番号 |
18K06043
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
松浦 哲郎 摂南大学, 薬学部, 教授 (20268494)
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研究分担者 |
尾崎 清和 摂南大学, 薬学部, 准教授 (40268496)
児玉 安史 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (40389119)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病性歯周病 / 糖尿病 / 歯周病 / ラット / マウス |
研究実績の概要 |
最近、ヒトの糖尿病性歯周病は第6番目の合併症と言われ、糖尿病患者で歯周病の発症率が高いことが注目されている。しかし、糖尿病と歯周病の関連性の根拠はいまだ不明であり、今後、糖尿病性歯周病発症のメカニズム解明や治療研究のためには、実験動物における病態の再現性が不可欠である。糖尿病性歯周病モデル動物として、糖尿病のラット・マウスを用いた歯周病の報告が多く見られるが、我々は1型・2型の糖尿病齧歯類で、歯周病とは全く病因・病態の異なる歯周の炎症、すなわち齲蝕(虫歯)による歯周炎が発現し、この齲蝕由来の炎症が従来の研究で歯周病と混同されている事実を発見した。そこで、本研究では、齲蝕の抑制を行った糖尿病動物で炎症が歯肉表面から歯槽骨へ伝播する真の歯周病モデルを作製し、糖尿病性歯周病の機構解明を目指ざした。また、糖尿病患者では唾液分泌機能の低下とともに、耳下腺肥大や耳下腺腺房細胞の脂肪蓄積が知られているが、糖尿病動物の口腔内で必発する齲蝕病変についても最も因果関係があると思われる唾液腺との関連性を解析し、ヒトの糖尿病合併症との相同性についても研究を遂行していく。 本年度は先ず糖尿を発症しない正常動物に対して、安定した歯周組織の炎症を発現するモデル作製を試みた。すなわち、ラットの歯肉に対し、I)リガチャー装着およびⅡ)LPS播種を試み、従来報告されている方法により安定した歯周組織の炎症が再現できるかどうかの確認実験を行った。その結果、いずれも歯周炎が安定して再現できる系はないことが解り、さらにLPSを表皮下に注入し、歯根膜に炎症が達する実験系を現在作成中である。 また今回、2番目の糖尿病における唾液腺機能障害に関して、糖尿病ラットの唾液分泌機能と、唾液腺を形態学的に解析した結果、両者に密接な関連性があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述したとおり、ラットの歯肉に対し、I)リガチャー装着およびⅡ)LPS播種の条件で歯周病の発現を試みた。しかし、いずれも安定した炎症(歯周病)が再現できる系はなく、炎症が歯肉の表皮を貫通して、表皮下に達し、歯根膜に炎症が見られるケースはなかった。そこで、さらに歯根の周囲で炎症を惹起すべく、ラットの歯肉表皮下でのLPS注入実験を追加し、現在結果を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今回行った研究から、LPSを直接、表皮下に播種し、歯根周囲で炎症を惹起させることが重要であると判明したので、今後、マイクロシリンジによるLPS注入法で炎症を表皮下に誘発させる実験系を確立する。炎症が安定して、誘発できれば、糖尿の負荷は安定した実験系が確立されているので、順調に結果は得られることは間違いない。 一方、糖尿病動物の口腔内での唾液分泌機能障害と唾液腺組織の形態変化の関連性については明瞭な結果が得られており、これらの実験系に関しては順調に推移している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、予定した動物数よりも少なくなったため、若干の次年度使用が生じた。本年度は合わせ物品費として充てる。
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