研究課題
本研究では、酵母の①対数増殖期と定常状態におけるポリA鎖の長さと翻訳効率・mRNA安定性の関係、②Ccr4-Not複合体によるポリA鎖の長さと翻訳の調節機構、③栄養源からのシグナルによるCcr4-Not複合体の活性調節機構について明らかにし、mRNAのポリA鎖の長さを介したmRNAレベルでの遺伝子発現制御機構と栄養源シグナルとの関係を解明する。Ccr4-Not複合体は、ポリA鎖の長さを調節するだけではなく、定常状態における翻訳抑制にも関与するが、このCcr4-Not複合体の機能が酵母の栄養状態によってどのように調節されるかについて解析する。今年度は、Ccr4-Not複合体のサブユニットCcr4およびPop2の遺伝子ノックアウトの表現型である増殖遅延・温度感受性増殖・遺伝子発現の異常に、ポリA鎖結合タンパク質(Pab1)の結合タンパク質であるPbp1が関与することを見出した。ccr4変異株、pop2変異株の増殖遅延・遺伝子発現の異常はpbp1変異により回復した。逆に、これらの表現型はPbp1の過剰発現によって増悪した。ccr4変異株、pop2変異株の中では、標的mRNA群のポリA鎖が長くなり、そこにPab1とPbp1が多く結合することにより、標的mRNAからの過剰な翻訳が起こり、増殖遅延・温度感受性増殖・遺伝子発現の異常などが引き起こされることが示唆された。また、翻訳開始因子eIF4E結合タンパク質Eap1 がCcr4-Not複合体と増殖制御および遺伝子発現調節において重複した機能を持つこと、Pbp1が培地の栄養源を非発酵性炭素源にした時の増殖・遺伝子発現制御に重要な役割をもつことを見出した。Eap1とPbp1は、栄養源シグナルによる遺伝子発現調節に機能すると考えられる。
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