研究課題/領域番号 |
18K06062
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡田 悟 九州大学, 医学研究院, 助教 (30734488)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | BiFC / CRISPR/Cas9 / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
ヒストンの翻訳後修飾は、DNAのメチル化と並んで、エピジェネティック制御の中核をなす分子機構である。その制御メカニズムの動的側面を理解するためには、「どのタイミングで」「どの細胞において」「どの種類の修飾が」「ゲノム上のどの位置で」生じるのかを調べることが必要不可欠である。 しかし、現時点においてこれらすべての情報要素を同時に取り出すことのできる手法は存在しない。本研究は、既存手法の限界を克服することを目指し、CRISPR/Cas9システム、ヒストン修飾認識ドメイン、Bimolecular Fluorescence Complementation (BiFC)を組み合わせて利用することで、上記の情報要素すべてを同時に取り出すことのできる、すなわち、「特定の遺伝子座」での「ヒストン修飾の変化」を「単一の生細胞内で検出する」ことのできる独自のイメージング手法を開発することを目的とするものである。 今年度は特に、単一遺伝子座におけるヒストン修飾の変化を可視化することを指向したBiFCの高度化に注力した。出芽酵母のセントロメア特異的なヒストンH3バリアントであるCse4タンパク質間のBiFC系をモデルとして用いた。GFP結合タンパク質の同時発現によって、BiFCフラグメント間の相互作用を安定化することでBiFC効率を高めることを試みた。その結果、Cse4-Cse4 BiFC系と共にGFP結合タンパク質を発現させることによって、Cse4-Cse4 BiFCシグナルの中央値を約5倍上昇させることができた。 今後は、GFP結合タンパク質によるBiFC効率の上昇に加えて、BiFC系をマルチマー化することによってさらにシグナル強度を高めていくことを試みる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一遺伝子座におけるBiFCシグナルを検出可能な程度まで増強するためには、タンパク質ペアひとつに由来するBiFCシグナルを増大させることが必要不可欠である。しかしながら、これまでBiFCの効率を上昇させる方法は開発されてこなかった。今年度は、BiFC効率を向上させることを試み、その結果、GFP結合タンパク質の同時発現という比較的シンプルな方法によって、出芽酵母Cse4間相互作用を利用したモデル系においては、BiFC効率を高めることができる可能性を示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
一過性のタンパク質-タンパク質近接イベントをより高効率に検出できるようにすることを企図して、BiFCフラグメント間の相互作用を補助するタンパク質ドメインを追加する。hiFRET (helper-interaction FRET)法において使用された、WW-WpペアおよびSH3-Spペアを用いる。同時に、BiFCを生じるタンパク質ペア一組に由来する蛍光シグナルを大きくすることを企図して、RNAとRNA結合タンパク質を介したBiFCのマルチマー化を試みる。具体的には、gRNAに複数のMS2ステムループを挿入するとともに、MS2コートタンパク質-N末側BiFCフラグメントを発現させる。ヒストン修飾認識ドメインとU1Apの融合タンパク質、U1Ap認識ステムループと複数のPP7ステムループをもつRNA、PP7コートタンパク質-C末側BiFCフラグメントの三者を同時に発現させる。これによって、タンパク質ペア一組によって再構成される蛍光タンパク質の分子数を増大させる。ここにさらにGFP結合タンパク質を発現させることで個々のBiFC効率を上昇させることで、得られるBiFCシグナルを最大化することを試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属する研究室に高感度EMCCDカメラが導入され、部局共通機器室の共焦点顕微鏡を使用する必要がなくなり、共通機器利用料の支払い経費分のコストを削減できたため。
|