研究課題/領域番号 |
18K06063
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古久保 哲朗 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (10271587)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 転写調節 / 転写因子 / 局所翻訳制御 / SAGA / 出芽酵母 / TFIID / TAF / TBP |
研究実績の概要 |
基本転写因子TFIIDはTBPと14種類のTAFから構成される巨大な複合体であり、SAGAとともにコアプロモーター上で働き、TBP-DNA相互作用を制御することによって転写の活性化を行う。我々は、主としてSAGA依存的に転写されるmRNA(のうち少なくとも一部)がRAM-Ssd1p-Mpt5p軸による局所翻訳制御を受ける可能性を新たに見出し、Ssd1p/Mpt5pが標的RNAとともに形成する液滴オルガネラの性状がRAMシグナリングにより変化するとの仮説を立て、現在その検証を試みている。 今年度は、主に遺伝学的な解析を行い、①Mpt5pの過剰発現が、taf1ΔTAND株特異的に生育阻害効果を示すこと(TAF1株では生育阻害効果を示さないこと)、②Mpt5p[5A](Cbk1p/RAMのコンセンサス標的配列を含む5箇所のセリンをアラニンで置換した非リン酸化型変異体)及びSsd1p(野生型・非リン酸化型変異体)の過剰発現は、TANDの有無にかかわらず生育阻害効果を示すこと、③Mpt5pの過剰発現による生育阻害効果は、ssd1-d株において有意に増大することを見出した。これらの結果は、①本研究の端緒となったΔRAM ssd1-d taf1ΔTAND三重変異株における合成致死性がMpt5pの機能昂進によるものであること、②Mpt5pとSsd1pが標的mRNAに対して一部競合的に結合すること等を示唆しており、大変興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回新たに、ΔRAM ssd1-d taf1ΔTAND三重変異株における合成致死性がMpt5pの機能昂進によるものであることを見出すとともに、Mpt5pとSsd1pの競合的な標的RNA分子への結合を示唆する結果が得られたことから。
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今後の研究の推進方策 |
Ssd1p, Mpt5pはPボディの構成成分であり、Cbk1p[RAM]によりリン酸化された両タンパク質はPボディから解離し、その結果として標的mRNAの翻訳が可能になるものと考えられる。Ssd1p, Mpt5pを含む液滴オルガネラ(Pボディ)の構築とCbk1p[RAM]によるその溶解という新たな分子機構について解析を進めるため、今後は試験管内アッセイ系の構築が急務と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想に反して、TAND欠失変異とRAM欠損変異間の合成致死性の原因がMpt5pの機能昂進にあることが判明し、計画の変更が必要となったため。次年度については、新たな分子モデルの検証に取り組むとともに、当初の計画通り試験管内アッセイ系の構築を進める。
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