研究課題
ヒノキ科植物の花粉症の原因抗原として新規に同定されたGRPファミリーペプチドBP14を対象とし、その分子レベルでのアレルギー誘発機構、特に、花粉症が原因となって誘発される花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)との関連を明らかにすることを目的とする。BP14遺伝子のクローニング、遺伝子組換えペプチドの大量発現、抗BP14抗体の作製、BP14の立体構造解析、抗体との相互作用解析およびエピトープの同定など、蛋白質科学的手法用いて、植物界に広く存在するBP14およびそのホモログであるGRPファミリーペプチドのアレルゲンとしての振る舞いを分子レベルで明らかにする。本研究で得られるBP14に関する知見は、新規診断技術の開発や花粉症治療薬への応用にもつながる基礎研究となることが大きく期待される。本年度の研究として、イトスギ花粉のRNA-SeqによるBP14およびそのホモログの遺伝子同定、同定遺伝子の組換えタンパク質の調製の検討を進めた。その結果、植物界では初めての発見となる極めて特徴的な配列を有するイトスギ由来の新規BP14ホモログ遺伝子の同定に成功した。また、BP14およびGRPファミリーのIgE反応性と臨床的関連の検討として、モモ等、各種GRPファミリーの遺伝子組換え発現、精製を進め、その患者血清に対する反応性の検討を行った。特に、配列の異なる各種GRPファミリー組換えペプチドを活用し、患者好塩基球へのBP14刺激によるマーカー活性化の評価を行うことで、そのエピトープに関する重要な知見を得ることに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
イトスギ花粉のRNA-SeqによるBP14およびそのホモログの遺伝子同定の研究の成果として、植物界では初めての発見となるヒスチジン―グリシンの繰り返し配列を有する遺伝子の同定に成功した。植物界以外では、このリピート配列を持つタンパク質の存在は広く知られているが、植物界の遺伝子では初めての発見である。GRPファミリーホモログでありながら、極めて特徴的な配列を有する、この遺伝子の発見は重要な成果といえる。
引き続きBP14遺伝子の探索を進めるとともに、他のGRPホモログに関して、遺伝子組換えペプチドの発現、精製、分子レベルでのキャラクタリゼーションをすすめる。本年度得られたエピトープに関する知見をもとに、変異体解析等を進める。
研究の進捗に応じて研究費配分行ったためで、翌年度以降の進捗に応じて使用する計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Allergy Asthma Immunol Res
巻: 11 ページ: 143-151
10.4168/aair.2019.11.1.143.