研究課題
ヒノキ科植物の花粉症の原因抗原として新規に同定されたGRPファミリーペプチドを対象とし、その分子レベルでのアレルギー誘発機構、特に、花粉症が原因となって誘発される花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)との関連を明らかにすることを目的として研究を進めた。イトスギ由来GRP遺伝子のクローニング、遺伝子組換えペプチドの大量発現、組換えペプチドを用いた立体構造解析、抗体との相互作用解析およびエピトープの同定など、蛋白質科学的手法を用いて、植物界に広く存在するGRPファミリーペプチドのアレルゲンとしての振る舞いを分子レベルで明らかにすることを目標とした。次世代シーケンサーでの解析によりヨーロッパイトスギ由来の新規GRP遺伝子の同定に成功し、WHO/IUISのデータベースにアレルゲンCup s 7として登録した。この組換え蛋白質発現系を用いて、患者血清に対する組換え蛋白質の反応性の検討、NMR法による立体構造解析等を進め、そのエピトープに関する議論を行った。次世代シーケンサーでの解析結果を利用して、Cup s 7及び他のGRP遺伝子の発現量解析を進め、他のGRPファミリー遺伝子と比較するとCup s 7のみが雄花中で大量に合成されること、またCup s 7は雄花で合成された後に花粉中にペプチドとして蓄積されること等を明らかにした。さらに、イトスギの花粉に含まれる可能性のある他のアレルゲン候補遺伝子の網羅的探索も行い、いくつかのアレルゲン候補遺伝子の同定に成功した。また、日本のスギの遺伝子情報を基に、GRPファミリーペプチド(Cry j 7)の組換えペプチド発現系の構築を行った。この組換え蛋白質を用いた検討から、Cry j 7がCup s 7と同様に、PFASの原因となる可能性を明らかにした。
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Allergy
巻: - ページ: 14816
10.1111/all.14816.