研究課題/領域番号 |
18K06076
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
米沢 直人 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (80212314)
|
研究分担者 |
柳田 光昭 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80365569)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 透明帯 / 受精 / 糖タンパク質 / Sf9細胞 |
研究実績の概要 |
哺乳類卵子は透明帯(zona pellucida: ZP)と呼ばれる卵外被によって覆われている。ZPは卵成熟、受精時の精子‐卵子間の種選択的認識、受精後の多精拒否、胚の保護などの役割を担う。ウシZPはZP2, ZP3, ZP4の3種類の糖タンパク質で構成されている。1.受精成立後ZP2のN末端付近が卵子表層顆粒由来オバスタシンにより特異的切断を受けることが多精拒否に必要である。特異的切断部位を含むZP2フラグメントについてSf9細胞を用いて発現精製し結晶化条件検討に進んだ。構造解析が可能な結晶は得られなかった。糖鎖付加部位を変異させたZP2フラグメントを作製したが発現量がかなり低下し大量精製には適していないことが判明した。2.ZP糖タンパク質の結晶構造はいくつか報告されているもののZP構築機構解明につながる複合体の高次構造解明にはどのグループも成功していない。ZP3フラグメントとZP4との複合体をSf9細胞を用いて発現精製し、ABiSの協力によるクライオ電子顕微鏡観察に進んだ。しかし、構造解析可能な電子顕微鏡像は得られなかった。3.ウシ精子のZP結合因子同定のために近接標識法の導入を試みた。精子結合活性を有する成分であるZP4のN末端側にビオチン化酵素を融合させたところ精子結合活性を示さなくなり研究目的には適していないことが判明した。4.当グループが開発した精子結合活性測定法を用いてZP4の精子結合部位同定を進めた。ブタZP4のN末端領域がウシ精子に対して示す結合活性がかなり低いことを利用し、ブタとウシとの間でのキメラタンパク質を作製した。N末端領域内の二つの領域が精子結合に関わることを示唆する結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発した精子結合活性測定法の論文投稿について、追加実験に時間がかかりようやく結果が出そろった段階である。この測定法を用いて次の論文投稿のためのデータを蓄積している段階であるため、なるべく早く受理されるよう作業を進めなければならない。ZP2フラグメントの大量発現精製やZP3フラグメントとZP4との複合体の大量発現精製はかなりの労働量が必要であるが、マンパワー不足のためフラグメントの長さを変えるなどの試行錯誤まで到達することができなかった。精子のZP結合因子検索については方法確立のための試行錯誤が更に必要なことが判明し、計画よりも更に時間が必要なことがわかった。ZP4の精子結合部位同定に関しては今回用いた戦略が有効であり順調に進みそうな感触を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ZP2フラグメント構造解析については糖鎖付加部位変異が適さないことが判明したため、発現精製後に酵素処理により糖鎖を除去し結晶化条件検討を行う。2.ZP3フラグメントとZP4の複合体構造解析については、ZP3フラグメントの領域を微調整し複合体の安定化を試みるとともに、ZP4についても末端を欠失させ複合体の凝集性を下げる試みを行う。3.ZP4結合因子検索については、ビオチン化酵素以外に酸化酵素の融合を試みて精子結合活性を保持したZP4プローブの作製と近傍標識の実施へ進む。化学架橋法も試みる。4.ZP4の精子結語部位同定について、これまで進めてきたN末端領域についての精子結合部位特定を完了させる。ヒンジ領域について精子結合の種選択性有無の調査および精子結合部位特定を進める。
|