研究実績の概要 |
哺乳類卵子は透明帯(zona pellucida: ZP)と呼ばれる卵外被によって覆われている。ZPは卵成熟、受精時の精子‐卵子間の種選択的認識、受精後の多精拒否、胚の保護などの役割を担う。ウシZPはZP2, ZP3, ZP4の3種類の糖タンパク質で構成されている。1.受精成立後ZP2のN末端付近が特異的切断を受けることが多精拒否に必要である。ドメインの立体構造は解明されているが特異的切断部位を含む複数のドメインからなるZP2フラグメントについては解明されていない。令和元年度には構造解析が可能な結晶は得られなかったため、令和2年度には小角X線散乱による構造解析を試みた。伸びた形の単量体であることがわかった。2.ウシ精子のZP結合因子同定のために近接標識法の導入を試みた。TurboIDとの融合タンパク質を作製したがビオチン化される精子タンパク質を検出することは出来なかった。ペルオキシダーゼとの融合タンパク質も作製したがペルオキシダーゼ活性を失っていた。3.当グループが開発した精子結合活性測定法を用いてウシZP4上の精子結合部位同定を進めた。ブタZP4のN末端領域がウシ精子に対して示す結合活性がかなり低いことを利用し、ブタとウシとの間でのキメラタンパク質を作製した。令和元年度にN末端領域内の二つの領域が精子結合に関わることがわかったので、各々の領域についてさらに細かくキメラタンパク質を作製することによりウシ精子が認識する二つの部位を特定した。4. プラスチックプレートに吸着させたウシZP4は精子結合活性を示すが、ZP4が精子のどの部分と結合しているのかは不明であった。溶液中でZP4を多量体化させると精子結合活性を示した。この多量体化ZP4は天然のZPと同様に精子頭部に結合することがわかった。
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