本研究では、2型糖尿病治療薬開発に向け、肝糖新生酵素遺伝子の発現機構を構造生物学的アプローチからの解明を目的とする。特に、GCN5蛋白質のN末端ドメインが持つユビキチンリガーゼ(E3)活性に着目し、新規E3酵素の活性発揮機構の解明を第一の目的とし研究を進めている。 R3年度は補助事業期間を延長し研究を進めた。本年度は、主に申請者が新しく同定したPCAF_Nドメイン(PCAF_HDから名前を改変)の種を超えた機能の保存性について決定構造とデータベースを用いて広く調べた。PCAF_Nは393種に保存され、PCAF_Nドメインを含む異なるドメイン構成からなるタンパク質は、26 種類存在する。PCAF_Nドメインはユビキチンリガーゼ酵素としては特徴的なフォールドを有しているが、広くユビキチン様蛋白質に視点を広げてもユビキチンリガーゼは多様な構造を有して触媒活性を示すことを見出した。その中においてもPCAF_Nは独自の構造を有して活性を発揮することも見出した。 以上の結果をまとめ、『Structural Diversity of Ubiquitin E3 Ligase.』と題した、ユビキチンリガーゼ酵素の構造の多様性に着目した総説を執筆し、国際学会誌Moleculesに発表した。 研究期間中に第一の目標であるN末端ドメインが持つユビキチンリガーゼ(E3)活性の証明に成功し、研究成果を原著論文と総説合わせて2報執筆しいずれも査読付き国際誌に報告した。研究に区切りがついたので、本年度で課題の終了とした。
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