研究課題/領域番号 |
18K06079
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡田 有意 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (20507181)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膜輸送体 |
研究実績の概要 |
本研究では、ATPの加水分解エネルギーを利用して基質を能動輸送するATP-binding cassette (ABC)輸送体のうち、外膜チャネルと膜融合蛋白質と複合体を形成して基質の輸送を行う三者複合体形成型輸送体MacBについて、その基質輸送機構を解明することを目的としている。この輸送体MacBは、マクロライド系抗生物質やペプチド毒素、リポ多糖、プロトポルフィリン等を輸送する重要な研究対象である。これまでにMacB単独の立体構造を明らかにしてきたが、その基質輸送機構の詳細な解明には、輸送基質とMacBの複合体の立体構造情報が不可欠である。そこで、2018年度は、MacBと基質の複合体の構造解析を目指し、先行研究によってMacBの基質となることが明らかになっているいくつかの基質について、その調製をおこなった。大腸菌発現系に用いることができる発現ベクターを構築し、大量培養をおこなった。培養条件、精製条件などの検討をおこない、MacBとの複合体の結晶化条件の検討に利用可能な、高純度かつ高濃度の基質の調製に成功した。 また、輸送基質と安定な複合体を形成するように、MacBの基質輸送において、重要な役割を担っていると考えられるアミノ酸残基に変異を入れた非輸送型MacB変異体の発現ベクターを構築した。その過剰発現用ベクターを用いて大腸菌を形質転換し、大量培養、調製をおこなった。今後、調製した基質との相互作用を確認し、MacBと基質複合体の結晶化条件の検討をおこなっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MacBとの複合体の結晶化に向けて、先行研究で明らかとなっているMacBの基質について、高品質の標品の調製に成功した。また、すでに相互作用することが明らかとなっている基質と輸送体を用いて、基質-輸送体の相互作用を確認する実験系を確立した。この確立した実験系を用いて、調製したMacBと基質が強く相互作用する条件を検討する。今後、これらの標品を用いて、複合体の結晶化条件の探索をおこなう予定である。さらに、すでに構造解析に成功しているアシネトバクター由来のMacB以外にも、他の生物種由来のMacBホモログについて、発現系構築、調製条件の検討をおこない、より高分解能の回折が得られる良質な結晶の取得に成功した。今後、条件検討をおこない、基質複合体の構造解析を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
MacBと基質が強く相互作用する条件の検討をおこない、複合体の結晶条件を探索する予定である。X線回折実験に利用可能な良質な結晶が得られない場合は、他の生物種由来のMacBホモログについても、調製の条件検討を行い、基質との複合体の結晶の取得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
結晶化条件の探索実験が、当初予定していたものよりも十分にできておらず、それらに関連した試薬や消耗品の購入を次年度に繰り越したことにより次年度使用額が生じている。2019年度はこれらの実験をおこなう準備ができていることから、関連する試薬、消耗品を購入、使用する予定である。
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