研究課題/領域番号 |
18K06081
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大山 拓次 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60423133)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA複製 / CMGヘリカーゼ複合体 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
DNA複製は生命の維持に必須の細胞内イベントの一つであり、大多数のタンパク質群が関与し、複雑ながらも精巧な仕組みによって実施される。DNA複製開始初期過程では、ORCによる複製開始点認識後、鋳型DNAを解きほぐす役割を果たすMCMヘリカーゼ(6量体)が装てんされる。MCM単独ではヘリカーゼ活性は低いが、GINS(4量体)およびCdc45(古細菌ではGAN)という活性化因子を伴い、総分子量約30万近いCMGヘリカーゼ複合体を形成することで必要な活性を持つようになる。本研究では真核生物と非常に良く似たDNA複製機構を持つ古細菌に着目し、(1)真核生物と共有するCMGヘリカーゼ複合体と(2)現段階では古細菌固有と推定されるDNAポリメラーゼD(PolD)について、生化学解析により明らかとなった直接相互作用の機能的重要性を原子レベルで解明するため、2者複合体の高分解能結晶構造解析を目指す。今年度は昨年度に引き続き、相互作用解析により見出したCMG-PolD間の機能的部分複合体1について、高分解能結晶構造決定に取り組み、分子間相互作用をアミノ酸レベル/原子レベルで議論するのに十分な高分解能(2.45Å)でのX線回折データ収集に成功した。分子置換法により、基本構造を決定することに成功した。本結晶の非対称単位には、2個の複合体が含まれていることが分かった。本複合体中のPolDの機能ドメインは、GISと結合している一方、GANとの相互作用は有していないようである。引き続き、原子構造精密化を行い、分子相互作用を正確に定義する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CMG-PolD機能的部分複合体1のX線回折データセットについて、昨年度の3.0Å分解能から本年度は2.45Åと大幅に分解能が向上し、申請時に目標の一つとして定めた高分解能での分子間相互作用解明の達成に大きく近づいたため。
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今後の研究の推進方策 |
CMG-PolD機能的部分複合体1について、基本構造の決定と原子モデル精密化を完成させる。原子構造に基づいて、特異的結合に重要なアミノ酸を明らかにする。情報解析(アミノ酸配列解析等)により、生物種を超えて保存されている相互作用を精査することでモチーフ同定を試みる。可能であれば、より多くの機能相互作用を持つ別の複合体の結晶構造解析に向けた実験も試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
決定したCMG-PolD機能的部分複合体の構造をもとに、機能検証実験に必要な試薬(受託合成ペプチド等)の購入を計画したが、構造をより精査してから合成ペプチドの設計を行うべきであると判断し、次年度に繰り越すこととした。研究全体の進行には影響はない。32年度上半期のうちに設計と発注を行い、入手でき次第新たな複合体の結晶化に取り組む。
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