DNA複製はあらゆる生物にとって生命の維持のための必須イベントであり、多くのタンパク質群が協調的に関わり合いながら、複雑であるにも関わらず時間的・空間的に高度に制御されて実施される。DNA複製開始初期過程では、ORCによる複製開始点認識後、鋳型DNAを解きほぐすMCMヘリカーゼ(6量体)がロードされる。MCMは、GINS(4量体)およびCdc45(古細菌ではGAN)という活性化因子を伴い、総分子量約30万近いCMGヘリカーゼ複合体を形成して初めて十分な活性ホロ酵素として活性を発揮する。 本研究では真核生物と良く似たDNA複製機構を持つ古細菌に着目し、(1)真核生物と共有するCMGヘリカーゼ複合体と(2)現段階では古細菌固有と推定されるDNAポリメラーゼD(PolD)について、生化学解析により明らかとなった直接相互作用の機能的重要性を原子レベルで解明するため、2者複合体の高分解能結晶構造解析を目指した。 相互作用解析により見出したCMG-PolD間の機能的部分複合体について、高分解能(2.45Å)での結晶構造決定に成功した。本結晶の非対称単位には、2個の複合体が含まれていることが分かった。本複合体中のPolD由来の機能ドメインは、GINSと結合している一方、GANとの相互作用は有していないようである。 結晶構造で観測された分子相互作用の機能的意義を明確にするため、研究協力者と共同で生化学的解析を行い、ヘリカーゼーポリメラーゼ機能的相互作用に関する新規の知見を獲得しつつある。詳細は研究成果報告書にて報告する予定である。
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