研究課題/領域番号 |
18K06085
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
寺原 直矢 中央大学, 理工学部, 助教 (40554738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / 高速AFM / 1分子計測 |
研究実績の概要 |
細菌のべん毛モーターは、人工のモーターと非常によく似ており、固定子と回転子からなる回転モーターとして機能する超分子複合体である。陽イオンチャネルとして機能する固定子の内部に陽イオンが流れると、固定子と回転子が相互作用し、その結果回転力が発生すると考えられている。この回転力を生み出す際に、陽イオンの流れに共役して固定子のダイナミックな構造変化が起こることが推察されているが、固定子の立体構造が明らかにされていないためその詳細は不明である。したがって、べん毛モーターの回転メカニズムを解明するためには、固定子の高分解能立体構造およびその動的構造変化を解析することが必要不可欠である。本研究では、クライオ電子顕微鏡および高速原子間力顕微鏡を用いて、単離精製した固定子複合体の立体構造およびその動的構造変化を高分解能で明らかにすることを目的とする。 固定子として機能する膜タンパク質MotPS複合体は界面活性剤存在下で、単分散した状態で精製することに成功した。そこで、そのサンプルを用いてクライオ電子顕微鏡観察用の氷包埋試料を作製し観察したところ、単分散していたサンプルが大きな凝集体を作った。これは氷包埋時の物理的影響によるものと考えられたため、氷包埋時の条件を検討した。一方、同じ精製サンプルを高速原子間力顕微鏡でも観察を行った。MotPS複合体のマイカ基板上における配向を制御するため、ヒスチジンタグを利用した方法を検討した。しかし、MotPS複合体の膜貫通領域がマイカ表面と非常に強い相互作用を有するためか、様々な方向を向いて観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで、クライオ電子顕微鏡観察用の氷包埋試料作製条件の検討を行ってきたが、単分散した状態のままでの氷包埋試料の作製に成功していない。また、高速原子間力顕微鏡観察でも様々な観察条件を検討してきたが、配向の制御に成功していない。そのため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
クライオ電子顕微鏡観察では、氷包埋試料作製条件の検討ではなく、サンプルの状態を検討する。現在までは、界面活性剤存在下のサンプルを用いていたが、界面活性剤の代わりに両親媒性高分子であるAmphipols A8-35に置き換えたサンプルを作製する。この操作の際、バイオビーズによって界面活性剤を除去するため、界面活性剤を一切含まない。したがって、一般的な可溶性タンパク質と同様な扱いが可能であり、氷包埋試料を改善することができると期待される。さらにナノディスク等の膜タンパク質の再構成を行い、サンプルの性質を変化させる方法を探索する。一方、高速原子間力顕微鏡観察では、サンプルの膜貫通領域がマイカ表面と非常に強い相互作用を有すると考えられることから、あらかじめ脂質膜に再構成した状態、 特に2次元結晶を作製し、配向の揃った状態での高分解能の観察を目指す。
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