研究課題/領域番号 |
18K06087
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
神鳥 成弘 香川大学, 総合生命科学研究センター, 教授 (00262246)
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研究分担者 |
玉井 栄治 松山大学, 薬学部, 准教授 (40333512)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 細菌細胞壁 / ソーテース / 線毛 / コンホメーション変化 |
研究実績の概要 |
細菌は,細胞の周囲に高度な細胞外構造物としてペプチドグリカン・表面タンパク質・タイコ酸からなる細胞壁を構築している。細菌の宿主細胞への感染は,細胞壁に固定化された表面タンパク質が関与している。特に細菌表面の線毛は,pilinタンパク質が重合して繊維状になったもので,感染に際して宿主細胞への接着・接合を担っている。表面タンパク質は,ソーテース(Sortase,以下Srt)と呼ばれる酵素によって細胞壁のペプチドグリカンに固定化される。また,線毛の形成においては,pilinタンパク質の重合と固定化の双方をSrtが行う。本研究の目的は,ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)を研究対象とし,Srtによる表面タンパク質の細胞壁への固定化機構,およびpilinタンパク質の重合機構を分子レベルで解明することである。2018年度においては,ウェルシュ菌の2種の株(strain 13およびSM101)のpilinタンパク質(CppA-St13,CppA-SM101)のX線結晶構造解析に成功した。CppA-St13とCppA-SM101は,95%のアミノ酸配列上の同一性を持ち,両者ともクラスCのSrt依存的に細胞表面に発現していることを,CppA抗体を用いたウェスタンブロットで確認している。これらのタンパク質は,Ig-likeフォールドを持つ3つのドメイン(D1,D2,D3)からなる。CppA-St13は,3つのドメインが伸長した構造をとっており,結晶中では線毛形成時の重合状態に近い構造が見られた。一方,CppA-SM101は,D1とD2の間で大きく折れ曲がった構造をとっており,部分的な重合状態の構造が見られた。詳細な検討から,CppA-SM101は,伸長構造から折れ曲がり構造へと大きなコンホメーション変化を起こしやすいことが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウェルシュ菌の2種の株(strain 13およびSM101)のpilinタンパク質(CppA-St13,CppA-SM101)のX線結晶構造解析に成功し(PDB ID:5XCC,6IXY),その立体構造を明らかにすることができ,学会発表する予定である(第92回日本生化学会大会,第92回細菌学会総会)。また,本研究成果については,現在,論文準備中である。ウェルシュ菌のSrtについても,そのいくつかは大量発現・精製に成功しており,順次,結晶化に着手している。また,本研究と関連するウェルシュ菌細菌細胞壁で働く酵素についての研究成果としては,アミダーゼ活性を持つ細胞壁分解酵素の活性ドメインの立体構造をX線結晶解析により決定し,学会にて報告した(第91回日本生化学会大会)。
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今後の研究の推進方策 |
現在,構造解析の結果から,CppA-SM101は,CppA-St13より,伸長構造から折れ曲がり構造へと大きなコンホメーション変化を起こしやすいと予想している。このことを確かめるために,大きなコンホメーション変化を起こすのに重要なアミノ酸を同定し,それらを置換することによって,伸長構造をとったCppA-SM101の結晶構造,および折れ曲がり構造をとったCppA-St13の結晶構造を得ることを試みる。また,Srtによる重合・線毛形成機構を詳細に解明するために,クラスCのSrtとCppAとの複合体のX線結晶構造解析にも着手したい。2019年度は,結晶化を試みるタンパク質試料が多く,新たに結晶化用インキュベーターを導入して,効率よく結晶化スクリーニングを行っていきたい。
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