研究課題
細菌表面にある線毛は,Piliタンパク質が重合して繊維状になったもので,感染に際して宿主細胞への接着・接合の機能を担っている。ウェルシュ菌線毛は,2種類のPiliタンパク質(シャフト部のCppA,先端部のCppB)がクラスC Sortase(CpSrtC)の触媒作用により重合し,細胞壁に固定化されたものである。本研究の目的は,CpSrtCによるpilinタンパク質の重合および線毛固定化機構を分子レベルで解明することである。CpSrtCは,触媒Cys残基を使って,Piliタンパク質のC末側にある5アミノ酸のCell Wall Sorting Signal(CWSS,CppAはLPSTG,CppBはLPETG)中のThrとGly間を切断し,Thrのカルボキシル基と, CppAのピリンモチーフ(NPK)中のLys側鎖のアミノ基との間にアミド結合を形成することにより,CppAを重合していく。CpSrtCによるCWSSの認識機構を解明するため,これまで合成ペプチドとCpSrtCの共結晶化を試みてきたが,複合体結晶は得られていなかった。そこで,今年度は,CpSrtCのC末側にCWSS(LPST)を付加したCpSrtC変異体(CpSrtC-LPST)を調製し,これを用いたX線結晶解析を行った。CpSrtC-LPSTは,結晶中,2分子が互いのCWSS部分を分子表面の溝で認識することにより分子間酵素・基質複合体を形成していた。CWSSは,活性残基Cys211から離れた溝に結合しており,この溝は,重合反応を助けるための基質結合サブサイトとして機能している可能性が示された。また,本研究と関連する細菌細胞壁中タンパク質の研究成果として,ディフィシル菌の細胞壁分解酵素(オートリシン)の活性ドメインの立体構造をX線結晶解析により決定した。以上の2つの成果は,学術論文として報告することができた。
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