本研究課題では、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensis (Tko)を用いて、修飾ヌクレオシドによるtRNA耐熱化機構を分子レベルで解明することを目的とした。研究期間内において、tRNAメチル化酵素Trm11は、Tkoが95℃以上の高温生育に必須であることを明らかにした。また、Tko Trm11がm2G10形成だけでなく、m2G67形成の責任酵素であることを突き止めた。一方、アーケオシンは、15位に見られる修飾ヌクオレオシドであり、m2G10と同様、Tkoの高温生育に必須であることが知られている。本研究では、研究協力者と共に、ArcS-RaSEA複合体がアーケオシン合成酵素であることを世界で初めて同定した。以上の研究成果は、国際的な学術雑誌に報告し、後者は国内でプレスリリースした。 Tko tRNATrpの結晶化には、20 A260 unitsが必要である。そこで最終年度において、Tko tRNATrpを大量に調製するため、その効率化を検討した。Tko KUW1株を嫌気的に128 L培養し、1ヶ月以上かけて、168グラムの湿菌体を準備した。まず、Tko 菌体104gからAGPC法により、total RNA画分 を11305 A260 units 抽出した。次にQ-sheparoseカラムを使って、陰イオン交換カラムクロマトグラフィを10回行い、tRNA画分を1415 A260 unitsを得た。最後に、DNA固相化プローブ法と乾熱機を使って、tRNATrpを2.86 A260 units 調製した。今後は、効率化した調製法を用いて、Tko tRNATrpを20 A260units程度準備し、結晶化を行う予定である。
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