研究実績の概要 |
初年度はLig-FEN-PCNA-DNA複合体について、tilt validation法等の補足データの取得及び解析を行い、論文に記載の立体構造の信頼性を向上させた。その結果、FEN-PCNA-DNA複合体及びFEN-Lig-PCNA複合体の解析結果が論文に掲載された(Mayanagi et al., Scientific Reports, 2018)。本論文は異なる複製因子FENからLigの間でDNAの受け渡しが行われる瞬間を初めて捉えたものである。またPolDの解析を開始し、その2つの構成サブユニットDP1とDP2の組成及び相対的配置を決定した (Takashima et al., Extremophile 2018)。またPolD-PCNA-DNA複合体のクライオ電顕による解析を進め、この複合体が溶液中でA型及びB型の2つの構造をとることを発見した。2年目から最終年度にかけて本複合体の解析の分解能を向上させ、おもに未決定だったC末端領域の原子モデルの構築を進めるとともに、この2構造がDNAの伸長モードと複製の誤りを修正する校正モードに対応し、両モードの切り換えがPCNAのE171等を始めとする、構成因子間の相互作用スイッチの切り換えによって起こるという機構のモデルを提唱した(Mayanagi et al., BMC Biol, 2020)。最終年度は更にPolDとPrimase複合体の単粒子解析も進展させ、部分的ではあるがプライマーゼのPriSサブユニットがPolDのDP1サブユニットから突出している様子を可視化することができた。本結果は分担者の石野による生化学実験とともに論文掲載が決定した(Oki et al., Nucleic Acids Research. 2021)。
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