複合スフィンゴ脂質はスフィンゴリン脂質とスフィンゴ糖脂質の2つに大別される。そんな教科書的常識を覆す、第3のカテゴリーを創設する全く新しいスフィンゴ脂質が見つかった。エタノールアミンとグリオキシル酸がセラミドに結合した、セラミドグリオキシルエタノールアミン(CGE)の存在が明らかとなったのだ。本研究ではこの特殊なスフィンゴ脂質CGEがどのように合成され、どのような機能をもつのか、を解明することを目指している。CGEは海洋微生物ラビリンチュラ類から発見された脂質である。CGEは頭部構造だけでなく、セラミド構造も哺乳類などとは大きく異なっている。CGEのセラミド構造を哺乳類型に置換した変異株を作製し、その影響を評価した結果、細胞の運動性に大きな影響を及ぼすことが分かった。ラビリンチュラ類はアメーバ様の形態をとることが知られているが、それがどのように制御されているのか、また何のためにアメーバ運動をするのかは不明である。本研究により、CGEがセラミド構造に応じてアメーバ運動に関与する可能性が示された。また、CGEの合成経路を明らかにするために、CGE合成不全株のスクリーニングを行った結果、どの培養時期においてもCGEを合成しない変異株を取得することに成功した。今後はこの株を用いて、CGE合成経路の解明およびCGEの機能解析へと展開していく予定である。
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