研究課題/領域番号 |
18K06096
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
伴 匡人 久留米大学, 分子生命科学研究所, 講師 (00579667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 膜融合 / GTPase / OPA1 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは外膜と内膜の二重膜構造を持つオルガネラであり、融合と分裂によりその形態を制御している。これまでに融合を制御する因子として、酵母から哺乳動物まで広く保存されているGTP加水分解蛋白質(GTPase)が同定されており、哺乳動物の場合、外膜融合はMitofusin (Mfn)、内膜融合はOPA1が機能する。これらのGTPaseは、膜小胞の分裂に関わるダイナミン様GTPaseであることから、膜との結合、GTP加水分解によるエネルギーを使って、膜融合制御に関わると考えられているが、その詳細な分子機構については不明な点が多い。これまでにカイコ・バキョロウイルス発現により、構造生物学解析に適したOPA1の調製法及び、in vitroアッセイを確立し、分子機構の解明に努めてきた。 これまでの研究技術基盤を用いて、「GTP加水分解がどのように膜融合の駆動力になるか?」を明らかにするためにX線結晶構造解析を進めている。平成30年度は、構造解析に必要な高純度・高濃度OPA1の大量調製法の検討を行った。カイコ・バキュロウイルス発現により発現した膜貫通領域を持つOPA1を、界面活性剤存在下で各種クロマトグラフィーにより精製した。精製したOPA1を限外ろ過膜により濃縮し、その会合状態をゲルろ過クロマトグラフィーで解析したところ、4量体を形成していることが分かった。濃縮や保存のために急速冷凍、解凍の過程が、OPA1の不規則な会合体形成を引き起こさないことが分かったので、精製・濃縮したOPA1を使って、構造解析を進めることができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線結晶構造解析に必要な高純度・高濃度のOPA1蛋白質の調製法を確立できたので、計画通り構造解析を進めることが可能となった。またいくつかのOPA1の部分リコンビナント蛋白質の発現、精製法を確立できたので、膜結合部位の同定や結合機構に関する研究が進むことも予想される。しかし一方で、リコンビナント蛋白質の発現・精製法の確立に多くの時間を費やし、解析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア膜融合の分子機構の全容理解を目指し、外膜及び内膜融合の解析を行う。 OPA1のX線結晶構造解析は、結晶化条件のスクリーニングを進める。これと並行して、OPA1とミトコンドリア膜に局在する脂質カルジオリピンとの特異的な結合に必要なドメインの同定及び、結合機構の解明を目指した研究を進める。欠損変異体や構造予測を基にした部分リコンビナント蛋白質を作製し、ミトコンドリア内膜をモデルとした人工脂質二重膜小胞との結合を解析する。 外膜融合の分子機構の理解のために、外膜融合GTPase Mfnによるin vitro膜融合解析を進める。カイコ・バキュロウイルス発現により、Mfnを調製し、ミトコンドリア外膜をモデルとした人工脂質二重膜小胞に挿入することで、外膜融合に於けるMfnとミトコンドリア外膜を構成する脂質の役割を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線結晶構造解析を本格に進めるために、多くの消耗品等の購入が予想されるので、繰越を行った。
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