研究課題/領域番号 |
18K06097
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
的場 一晃 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (60613792)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オートファジー / クライオ 電子顕微鏡 / Atg9 |
研究実績の概要 |
オートファジーに必須な因子であるAtg9はこれまで6回膜貫通型タンパク質と考えられ、その機能は不明であった。本年度の研究により、Atg9のクライオ電子顕微鏡像を3Å分解能で決定した。明らかにした構造からAtg9は4回膜貫通ヘリックスを持つ三量体であることが示された。 三量体Atg9はlateral pore, vertical poreと名付けた特徴的な穴を持つ。lateral poreには両親媒性LMNGが結合した電子密度が観察された。これらのpore周辺のアミノ酸変異株ではオートファジーに欠陥が見られた。 次にAtg9がlipidスクランブル活性を持つかどうか調べた。具体的には、PI3P Kinaseにより非対称リポソームを調製できる系を用いた。Atg9を含むリポソームを調製し、凍結活断レプリカ法により、PI3Pのリポソーム上での分布を調べた。その結果、外葉に新規に合成されたPI3Pが、野生型Atg9を含むリポソームでは外葉、内葉共に観察されるのに対し、変異体では外葉に観察された。このことは、Atg9がPI3Pの内葉への移動を促進したことを示唆している。 またporeの変異によりオートファジー活性を一部失った酵母株では、隔離膜(オートファジー誘導により新規に伸張する膜構造体)が野生型に比べて小さいものが多く観察された。 これらのことからAtg9のlipid転移活性がオートファジーに必須であり、隔離膜伸張に関わることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的としていたAtg9のクライオ顕微鏡解析に成功し、3Å分解能で構造が明らかになった。また、これまで知られていなかったAtg9の機能についても手掛かりを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
得られた立体構造に基づいた変異体解析を行うことで、Atg9がlipid scramblaseであるという実験的な証拠をさらに積み重ねる。 また、lipidがAtg9のどこを通り抜けていくかを実験的に示す必要がある。これを証明するためには新たな実験系の構築が必要になる。クロスリンクMSなどの手法を用い仮説を証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画が順調に進捗したため消耗品等が不要になり、差が生じた。また国内外での発表のための予算をまだ使用していないため。 今後、新たな実験を行うために機器などを購入する。さらにこれまでのまとまった成果を発表するため旅費として使用する。
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