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2018 年度 実施状況報告書

全長の転写調節因子LTTR-DNA複合体の結晶構造解析と転写活性化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06098
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

千田 美紀  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任助教 (10707467)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード結晶構造 / LysRタイプ転写調節因子
研究実績の概要

今年度は、研究実施計画に記載した中で、全長CbnR-DNA複合体の結晶化条件の最適化及び結晶工学的処理による結晶の改善とX線回折データ収集に集中して研究を進めた。研究開始時には、6.9 A分解能の全長CbnR-DNA複合体結晶が得られていたが、構造を決定するためには結晶の性質を大きく改善する必要があったため、結晶化条件および結晶の凍結条件の最適化により良質な結晶を得ることを試みた。結晶化溶液の沈殿剤濃度及び結晶化のドロップレットサイズ等のパラメータの最適化により当初は0.1mm程度の大きさであった結晶を0.3mm程度の柱状結晶へと成長させることができた。また、クライオプロテクタントの最適化の結果、トレハロースおよびエリスリトールを用いた場合にPhoton FactoryのBL-1Aで3.6 A分解能の回折が生じる結晶が得られた。xdsとxscaleを用いたデータ処理の結果、結晶の空間群 P6(1)22, 格子定数a=b=109, c=606Aであり、最外殻のR-mergeが0.5以下となるところでデータをカットすると4.2 A分解能のデータが得られた。また複数データをマージし、redundancyを高めた結果、3.5 A分解能のデータとすることができたため、このデータを用いてMR-native SAD法による構造決定を試みた。分子置換法で部分構造を決定するために用いる初期モデルとしては、我々のグループで結晶構造を決定したCbnRのDNA結合ドメイン(CbnR_DBD)と26塩基対のRBSからなるCbnR_DBD-RBS複合体を用いた。MR-native SAD法による位相決定の結果、CbnR四量体に結合するDNAの電子密度が確認でき、Phenix_refineを用いた結晶学的精密化によりfreeR/R=0.30/0.26まで精密化できている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

全長CbnR-DNA複合体の結晶構造解析については、まだ構造精密化が完了していないものの予定通りに進捗していると言える。
結晶化条件およびクライオプロテクタントの最適化により、全長CbnR-DNA複合体結晶の性質を当初の6.9 オングストローム分解能から3.5オングストローム分解能へと改善することができた。MR-native SAD法による位相決定により、CbnRに結合する56塩基対のDNA全体(RBS: recognition binding siteとABS: activation binding site)の電子密度が確認できているもののDNAのモデル構築に苦労している状況である。具体的にはDNAのうちRBSについては既に構造を決定しているCbnR_DBD-RBSをベースにしてモデル構築を進めることができているが、ABSについては電子密度が曖昧でありDNAを正確に置くことができていない。そのため、CbnR_DBD-ABS複合体の結晶構造があれば、ABS領域のモデル構築が行いやすくなると考え、結晶化スクリーニングを行った。その結果、いくつかの条件で結晶が得られたが、回折データ収集及び構造解析の結果、CbnR_DBD単体の結晶であることが確認できている。引き続き、結晶化スクリーニングを続けている状況である。
全長CbnR-DNA-誘導物質複合体の結晶構造解析については、現在までに得られている全長CbnR-DNA複合体結晶へ誘導物質をソーキングする方法では、大きな構造変化が生じる場合に適応できないため難しいと考えている。

今後の研究の推進方策

全長CbnR-DNA複合体の結晶構造解析については、現在までに得られているデータを再処理し分解能を高めること、また、部分構造としてCbnR_DBD-ABS複合体を用いることにより、確実に達成できると考えている。
全長CbnR-DNA-誘導物質複合体については、既に得られている全長CbnR-DNA複合体結晶へのソーキング法ではなく、共結晶化を進めていく。確実に三者複合体結晶を得るためには、まず、三者複合体が安定に形成される条件を探索する必要がある。結晶が得られる条件が全長CbnR-DNAとは全く異なる可能性も高いため、研究代表者が所属する高エネ機構・構造生物学研究センターの結晶化ロボットを用いて約1000種類の条件についてスクリーニングを行う予定である。結晶化の成功率を高めるために、全長CbnR-DNA複合体結晶をシード結晶として用いたmicro-seeding法による初期スクリーニングも試みる予定である。得られた結晶には全てX線を当て、全長CbnR結晶及び全長CbnR-DNA複合体結晶とは異なる格子定数のものに絞って、結晶化条件の最適化と解析を進めることで三者複合体結晶を見落とさないように注意する。結晶の性質が悪い場合には、嫌気条件下での結晶化や結晶工学的処理による結晶の改善を試みる。さらに、他の手法(例えば、CryoEMを用いた解析など)も組み合わせて研究を進めることで効率的に研究を進めることができると考えている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Structural and computational bases for dramatic skeletal rearrangement in anditomin biosynthesis2018

    • 著者名/発表者名
      Nakashima, Y., Mitsuhashi, T., Matsuda, Y., Senda, M., Sato, H., Yamazaki, M., Uchiyama, M., Senda, T. & Abe, I.
    • 雑誌名

      JACS

      巻: 140 ページ: 9743-9750

    • DOI

      10.1021/jacs.8b06084

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Crystal structure of the nitrosuccinate lyase CreD in complex with fumarate provides insights into the catalytic mechanism for nitrous acid elimination.2018

    • 著者名/発表者名
      Katsuyama Y., Sato, Y., Sugai, Y., Higashiyama, Y., Senda, M., Senda, T., Ohnishi, Y.
    • 雑誌名

      FEBS Journal

      巻: 285 ページ: 1540-1555

    • DOI

      10.1111/febs.14380

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] LysRタイプ転写調節因子CbnRのDNA結合ドメインとDNAとの複合体構造2018

    • 著者名/発表者名
      千田 美紀, 安達 成彦, 千田 俊哉, Maharani Pertiwi Koentjoro, 小川 直人
    • 雑誌名

      日本結晶学会誌

      巻: 60 ページ: 135-141

    • DOI

      10.5940/jcrsj.60.135

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 良質なタンパク質結晶を得るための戦略2019

    • 著者名/発表者名
      千田美紀
    • 学会等名
      平成30年度第2回構造生物学研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Crystallization strategy when no crystals are obtained in the initial screening,2018

    • 著者名/発表者名
      Miki Senda, Toshiya Senda
    • 学会等名
      Structural Biology 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 良質なタンパク質結晶と回折データを効率的に得るための戦略2018

    • 著者名/発表者名
      千田美紀、千田俊哉
    • 学会等名
      結晶学会平成30年度年会
  • [学会発表] Crystallization strategy when no well-diffracted crystals are obtained in the crystallization screening.2018

    • 著者名/発表者名
      Miki Senda, Toshiya Senda
    • 学会等名
      American Crystallographic Association (ACA) 2018
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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