研究課題
コラーゲンとグリコサミノグリカン(GAG)は骨の主要な有機成分であるにもかかわらず、その相互作用はこれまでほとんど知られていなかった。しかし本研究により酸性条件下でGAGがコラーゲン線維に結合して耐酸性コラーゲン線維を形成することが見い出されたことにより、コラーゲン分解においてGAGが新しい役割を担うことが予想されている。該当年度では、コラーゲンの分解産物を網羅的にモニターできる質量分析装置を使用した測定系を用いて、カテプシンKによる耐酸性コラーゲン線維の分解について検討した。コラーゲン線維はカテプシンKによる分解を受け、経時的にN末端およびC末端側から分子内部へと分解が進行する様子がモニターされた。コンドロイチン4-硫酸を結合した耐酸性コラーゲン線維では、コラーゲンの内部配列の分解が抑制される傾向が見られた。一方、走査型電子顕微鏡によるコラーゲン線維の観察実験では、GAG添加により形成が見られたコラーゲン線維の束構造がカテプシンKに対して耐性を持つ様子が観察された。このようなGAGによるコラーゲン線維保護作用は、質量分析装置を用いた結果が裏付けている。以上より、コラーゲン線維はカテプシンKによる分解の際に、GAGと結合して耐酸性コラーゲン線維を形成することでカテプシンKの基質特異性に関与することが示唆された。このことは、骨分解におけるコラーゲン線維の分解メカニズムを解明する上で重要な知見であると思われる。
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