研究課題
本研究は、マウス中枢神経のランビエ絞輪に特異的に存在する糖鎖の生理的意義を解明することを目指している。我々は、ボツリヌス毒素由来レクチン複合体の立体構造解析データから、意図して糖鎖結合能を変化させたリコンビナント変異レクチン複合体を作製しており、その内の一つGgがマウス脳のランビエ絞輪に特異的に結合することを見いだした。ランビエ絞輪は、跳躍伝導で重要な役割を果たしてることからその形成不全は様々な神経疾患に繋がることが知られており、またアストロサイト等の結合部位としての役割もあり、この部位の詳細な構造、成分の理解は脳機能研究において重要である。そこで、H30年度はまずGg結合性糖鎖の時空間的発現量の変化、つまり脳内の各部位ごとの発生、発達過程において糖鎖の発現量がどのように変化するかを観察することからはじめた。パラホルムアルデヒドで灌流固定したマウス脳より凍結切片を作製し、ランビエ絞輪の位置を抗caspr抗体で特定してGgの結合量を定量的に解析した。結果は、中枢神経系のランビエ絞輪では部位によって時期は多少異なるものの生後14日目ぐらいからGg結合性糖鎖が観られるようになり、生後30日目ぐらいには9週齢のものとほぼ変わらない程度の発現量であることが判明した。また、パラフィン包埋した試料や脱脂した試料の切片において、ガングリオシドGM3結合性のコレラ毒素とGgとの染色画像を比較検討した結果、Ggは糖タンパク質糖鎖に結合していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究は当初の計画通り概ね順調に進んでおり、論文として成果を発表する準備も整いつつある。
現在、当初の計画通りGg結合性糖タンパク質の同定を試みており、その結果が得られた後も計画通りの手法で糖鎖構造等の解析を進め、その糖鎖、糖タンパク質のランビエ絞輪における生理的機能の解明へと研究を進めていく予定をしている。
計画作成当時に購入予定としていた設備機器と同様の機能を備えた機器が学内の他の研究室にあり、それを使わせていただけることになったため購入する必要がなくなり、機器設備費が節約できた。この節約分を次年度の物品費に充当すべく繰越金が生じた。
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