研究課題/領域番号 |
18K06108
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井筒 ゆみ 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20301921)
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研究分担者 |
伊藤 道彦 北里大学, 理学部, 准教授 (90240994)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タンパク質 / 上皮 / 発生・分化 / 細胞・組織 / 免疫 / T細胞 / 器官形成 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
令和元年度(2年目)に上げていた研究計画2の「鰓蓋(サイガイ)皮膚の細胞死における免疫細胞機能の検証」を行った。この研究計画は、井筒らがこれまでおたまじゃくしの尾の表皮細胞の死にかかわるT細胞の機能の検証を行ってきた中で、予備的実験結果を得たことにより、新たに加えたものである。形態形成にT細胞が関わるということが、尾だけで無く前肢が出現する際の腕のまわりの皮膚の細胞死にも及んでいるという、T細胞機能の一般化を目指すものである。これは、これまでの報告を発展させるものである。実験は、準備状況がかなり整っていいたため、井筒と大学院生・石森泉が予定通り行った。これまでに井筒らは、体づくりに関わる免疫系の、標的として抗原タンパク質をコードする遺伝子を同定している。それらに己の尾を食らう動物の意味のオウロボロス(Ouroboros)と命名し、異なった2つの分子に、ouro1(オウロ1)とouro2(オウロ2)として区別した。尾における2つのouro遺伝子の機能解析は終わっており、過剰発現させる、またはノックダウンさせることができるトランスジェニックラインも樹立しており、既に論文として報告されている。尾と同様の手法を用いて機能解析すると、前肢が出現する際の腕のまわりの皮膚の細胞死にも、2つのouro遺伝子が必要であることが示された。現在は、得られたデータを元に、確立した方法を繰り返して行うことで統計処理をし、論文投稿への準備を整えつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度(平成30年度)、研究計画にあげた課題について、おおむね順調であり、成果が期待以上にでている面もあるため、研究計画2で挙げた、おたまじゃくしの尾以外の器官形成におけるオウロタンパク質を介した免疫機能についての研究に着手した。順調な理由としては、研究計画に、井筒らが既に作成していた遺伝子組換えツメガエルを使用するが、F3世代を作成することができたことが大きい。それによって、これまでF2世代をつかって予備的に得られていた結果より、より安定した結果が得られた。おたまじゃくしのカエル(成体)へ体の作り換えが起こる時に、プログラム細胞死が起こるが、従来甲状腺ホルモンによって消失すると言われてきた中、井筒らは複雑な尾の細胞死には、免疫系の細胞と細胞により認識機構も関与すると主張してきた。このことが、前肢の形成時に上腕嚢皮膚(brachial sac skin)が消失する際にも、当てはまることが実験データより示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上腕嚢皮膚(brachial sac skin)が消失する際の上皮組織における発現様式をqPCR法 (申請キット試薬類)で調べる。予備的実験が既に行われているが、上腕嚢皮膚に丸状に細胞死がおこる理由を探るために、発現様式はRT-PCRだけでなく、whole mountで調べる必要があるので、初期胚の既存の方法を改良し詳細な解析を進める。後期発生過程の比較的大きな個体を用いた発現解析は、技術敵に難しく、現在、数件の報告例にとどまる。方法の改良には少し時間がかかるかもしれないと予想している。良好な結果が得られた場合、トランスジェニックだけでなく、CRISPR法を用いた阻害実験から機能を解明する。2019年にCRISPR法については、大きく改善された方法が発表された。これを参考に従来の方法を検討する必要もでてきた。後期課程の解析は、次世代を用いる必要があるのでまともなデータを得るまでに数年かかってしまう。初代作りがキーとなるので、慎重に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックツメガエルのヒートショックプロモーター下流に組み込まれているouro遺伝子を発現誘導させる時に、熱刺激を加えるプローブ(半田ごてのような部品)を追加購入のために、急遽前倒しの費用が必要であった。一方、論文投稿ができなかったので、差額が生じた。
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