研究課題/領域番号 |
18K06109
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
角田 聡 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00598857)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電気生理学 / 微生物ロドプシン / イオンポンプ / イオン輸送 |
研究実績の概要 |
光駆動型イオンポンプであるロドプシン分子によるイオン輸送を、今までにないマイクロ秒オーダーの時間分解で測定した。過去のイオンポンプ活性測定では時間分解能がサブ秒~分オーダーであり、かつ膜電位、イオン濃度勾配などの電気化学ポテンシャル差の正確な制御が困難であった。本研究では電気生理学的手法にナノ秒フラッシュレーザーを組み合わせた。これにより、マイクロ秒オーダーの高い時間分解能により、かつ電気化学ポテンシャル差を正確に制御し、ロドプシンの光反応を1回のみ誘起した際のイオン輸送を測定した。そして輸送速度、輸送量を定量的に解析することで、光反応サイクルにおけるエネルギー変換メカニズムの理解を目指した。 昨年度までにプロトンポンプロドプシン(GR)、及びナトリウムポンプロドプシン(NaR)のシングルターンオーバーあたりの輸送測定を、電気化学ポテンシャル差が存在する状態(膜電位がかかった状態)で行い、イオンポンプとしてのポンプの駆動力を算出した。さらにアスガルド古細菌類由来新規ロドプシンSzRのイオン輸送能を評価したところ、この分子は従来のプロトンポンプとは逆方向にイオン輸送を行う(つまり細胞外から細胞内へプロトン輸送を行う)光駆動型逆向きプロトンポンプ(内向きプロトンポンプ)であることが判明した。 該当年度はより系統的な解析を目指し、外向きプロトンポンプ6種と内向きプロトンポンプ3種の電気生理学によるイオン輸送測定を試みた。各分子には輸送活性のpH 依存性、膜電位依存性等に顕著な差が存在した。例えば、外向きポンプにおいては輸送活性が細胞外pHに大きく依存するものとほとんど影響を受けない2つのグループに分類された。このことから、同じ外向きプロトンポンプであったとしてもその輸送機構は異なり、タンパク質内部のプロトン移動の様式には多様性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、外向きプロトンポンプロドプシン(GR)、ならびにナトリウムポンプロドプシン(NaR)のポンプとしての駆動力の測定、およびその分子メカニズムに関する研究を立案した。これらの分子に関する実験と目標は2年度目まででほぼ達成し、三年目は新規ロドプシンSzRに関して電気生理学実験を遂行した。さらに昨年度からは、より系統的な解析を目指し、外向きプロトンポンプ6種と内向きプロトンポンプ3種の電気生理学によるイオン輸送測定を試み、それら分子の特性の違いを見出しつつある。以上の研究進捗の状況から「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前述した通り、昨年度は、より系統的な解析を目指し、外向きプロトンポンプ6種と内向きプロトンポンプ3種の電気生理学によるイオン輸送測定を試みた。各分子には輸送活性のpH 依存性、膜電位依存性等に顕著な差が存在した。現時点で判明した点は、同じ外向きポンプであったとしても、細胞外pH依存性において2つのグループに分類されるという点である。このことから同じ外向きプロトンポンプであったとしてもその輸送機構は異なり、タンパク質内部のプロトン移動の様式には多様性があることが示唆される。 今後はこの2グループの性質の違いをより詳細に解析することで、プロトン輸送の分子機構に理解を深めたいと考えている。同様に内向きプロトンポンプについてもpH依存性、膜電位依存性を調べることで同様に分子メカニズム解明に迫る予定である。
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