研究課題/領域番号 |
18K06112
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 泰憲 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (30467659)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小胞体 / オートファジー / ER-phagy / 膜変形タンパク質 / Three-way junction |
研究実績の概要 |
小胞体の恒常性は選択的オートファジー(ER-phagy)により維持されており、小胞体の不要になった領域が膜変形、膜分裂し、隔離膜に包まれて排除される。オルガネラ全体が排除されるオートファジーとは異なり、ER-phagyでは隔離膜に共役して生じる小胞体の局所の膜変形と膜分裂を理解しなければならないが、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究では、膜変形タンパク質の作用機序を解析することで、ER-phagyにおける小胞体の局所の膜変形と膜分裂の分子メカニズムを明らかにし、膜変形タンパク質のプロテオスタシスの立場から小胞体の恒常性維持機構を解明する。 チューブ状小胞体を連結する三つ又構造はthree-way junctionと呼ばれ、最近、three-way junctionがER-phagyの調節に重要な働きをしていることが明らかにされつつある。そこで本年度は、three-way junctionに着目し、その形成機構の解析を行った。その結果、three-way junctionに局在する新しい小胞体膜タンパク質としてp57を発見した。p57はthree-way junctionの形成に必須の働きをする膜変形タンパク質atlastinおよびlunaparkと結合した。p57のsiRNAノックダウンはthree-way junctionの数を減少した。これらのことから、p57自身が膜変形タンパク質として、あるいは膜変形タンパク質の調節因子として機能することで、three-way junctionの形成を制御していることが明らかになった。このように本年度は、ER-phagyに重要なthree-way junctionの制御機構について新しい知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、three-way junctionの形成を調節する新しい小胞体膜タンパク質p57を発見した。p57はN末細胞質領域にあるcoiled-coil領域を介してthree-way junctionへ局在すること、C末膜貫通領域を介して膜変形タンパク質atlastinおよびlunaparkに結合することを明らかにした。Three-way junctionはER-phagyの調節に重要な働きをしていることが知られている。従って今後、ER-phagy誘導時におけるp57のプロテオスタシスの解析を推し進めることで、隔離膜に共役して生じる小胞体の局所の膜変形と膜分裂の分子メカニズムの解明に繋がると考えられた。このように小胞体の恒常性維持機構に関わる新しい分子、新しい知見が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ER-phagyを誘導した培養細胞から小胞体膜画分を単離し、界面活性剤で可溶化する。可溶性画分をショ糖密度勾配遠心分離し、本年度発見したp57を含む様々な膜変形タンパク質とER-phagy受容体(FAM134BやReticulon3B等)の両方を含むフラクションを決定する。このフラクションから膜変形タンパク質を免疫沈降し、共沈したタンパク質を質量分析で網羅的に同定する。同定したタンパク質群をsiRNAノックダウンして、膜変形タンパク質の局在と膜変形に与える効果を検討し、膜変形タンパク質のER-phagy標的部位への集積と膜変形誘導の分子基盤を明らかにする。 膜分裂は、膜変形タンパク質が化学機械的な働きをするタンパク質をリクルートし、協力して膜分裂を行うと考えられているが、ER-phagyにおける化学機械分子の実体は不明である。そこで、オートファジー欠損細胞株にER-phagy受容体と膜変形タンパク質を過剰発現し、膜安定化因子をsiRNAノックダウンする。この細胞から小胞体膜画分を単離し、膜分裂の準備状態にある小胞体膜を人工的に調製する。他方、ER-phagyを誘導した培養細胞から細胞質画分を調製する。小胞体膜画分と細胞質画分を化学エネルギー(ATP再生系およびGTP)存在下で混合し、試験管内で膜分裂反応を進行させる。膜分裂活性を指標にして、各種カラムクロマトグラフィーにより細胞質画分から膜分裂を担うタンパク質を精製し、化学機械分子の実体を明らかにする。
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