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2019 年度 実施状況報告書

心疾患に関連する新奇生理活性物質 D-グルタミン酸の合成酵素に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K06117
研究機関北里大学

研究代表者

片根 真澄  北里大学, 薬学部, 准教授 (90383653)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードグルタミン酸ラセマーゼ / D-グルタミン酸合成酵素 / D-グルタミン酸 / 心臓 / D-アミノ酸 / アミノ酸ラセマーゼ / L-セリンデヒドラターゼ / デヒドラターゼ
研究実績の概要

本研究の目的は、遊離の D-グルタミン酸(D-Glu)の合成活性を有する酵素として最近同定した、ラット Glu ラセマーゼ(L-Glu と D-Glu の相互変換を触媒する酵素)の性質・機能の詳細を解明することである。平成 30 年度には、本酵素のオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、および補因子要求性を明らかにした。
令和元年度は、大腸菌で発現させて精製したラット組換え Glu ラセマーゼを酵素標品として用いて、本酵素のラセマーゼおよびデヒドラターゼ(ヒドロキシアミノ酸の脱水による分解)反応それぞれにおける至適 pH ならびに至適温度、また、それぞれの反応において基質とするアミノ酸に対する動力学定数を解析した。その結果、ラセマーゼ(基質:L-Glu)およびデヒドラターゼ(基質:L-セリン[L-Ser])反応それぞれにおける至適 pH は 8.0 および 9.0 であり、至適温度はともに 45 度であることが明らかになった。また、ラセマーゼ反応における L-Glu および D-Glu、ならびにデヒドラターゼ反応における L-Ser、D-Ser、および L-スレオニン(L-Thr)に対する触媒効率は、それぞれ 0.034、0.022、31、0.15、および 25 min^-1・mM^-1 であることが明らかになった。
次に、本酵素が生体内において D-Glu 合成酵素として機能しているかどうかを解析するために、哺乳細胞発現用ベクターに本酵素の cDNA 配列がクローニングされたプラスミドを構築した。引き続き、構築したプラスミドをヒト由来培養細胞株に導入し、薬剤選別後に形成された細胞のコロニーを単離することにより、本酵素を安定的に高発現する細胞株を樹立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究の開始当初における研究計画は、主に次の 2 つに大別される。すなわち、1 つは、(1)大腸菌で発現させて精製したラット組換え Glu ラセマーゼを酵素標品として用いて、本酵素の酵素学的性質・機能を解析することである。もう 1 つは、(2)哺乳類由来の培養細胞株を用いて、本酵素が細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を解析することである。また、上記(1)の具体的な研究計画は、本酵素のオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、補因子要求性、至適 pH、至適温度、および動力学定数を明らかにすることであった。一方、上記(2)の具体的な研究計画は、本酵素の発現レベルが抑制または亢進された哺乳類由来培養細胞株を樹立し、本酵素の細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を明らかにすることであった。
平成 30 年度には、主に上記(1)の研究を進め、ラット Glu ラセマーゼのオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、および補因子要求性を明らかにした。令和元年度には、前年度に引き続き、上記(1)の研究を進め、本酵素の至適 pH、至適温度、および動力学定数を明らかにした。さらに、上記(2)の実験も進め、本酵素を安定的に高発現するヒト由来培養細胞株を樹立した。すなわち、計画していた研究全体の 75 ~ 80% 程度が進行したと思われる。したがって、本研究は「当初の計画以上に進展している」と考えられる。

今後の研究の推進方策

令和 2 年度は、令和元年度に樹立した、ラット Glu ラセマーゼを高発現させたヒト由来培養細胞株を用いて、本酵素が細胞内において D-Glu 合成酵素として機能しているかどうかを解析する。また、D-Glu 以外のアミノ酸含量に与える影響も解析する。
具体的には、上記の樹立した細胞を定法に従って一定期間培養し、細胞および培養上清それぞれを回収する。この際、回収した細胞は、すみやかに破砕する。引き続き、メタノールを用いた除タンパク後、遠心減圧乾固する。その残渣に含まれるアミノ酸含量を、当教室で既に確立・経験済みの、高速液体クロマトグラフィーを用いた分離・検出法により定量する。また、コントロールとして、本酵素を発現させていない細胞を用いた同様の解析も行い、それぞれの結果を比較することで、本酵素が種々のアミノ酸含量に与える影響を明らかにする。
哺乳類では現在までに、D-Ser の合成酵素である Ser ラセマーゼ、D-Ser の分解酵素である D-アミノ酸オキシダーゼ、D-アスパラギン酸(D-Asp)の分解酵素である D-Asp オキシダーゼ、D-Glu の分解酵素である D-Glu シクラーゼ、および L-Ser と L-Thr の分解酵素である L-Ser デヒドラターゼが同定されている。また、本研究対象としているラット Glu ラセマーゼは、ヒトを含めた哺乳類で保存されている。そこで、本研究で用いたヒト由来培養細胞株における、これらの酵素の発現レベルを RT-PCR 法で解析する。これにより、各アミノ酸の細胞内ホメオスタシスにおける、Glu ラセマーゼも含めた各酵素の役割が詳細に判明すると考えられる。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [学会発表] D-グルタミン酸シクラーゼ:D-グルタミン酸分解酵素の酵素学的性質の解析2020

    • 著者名/発表者名
      片根 真澄、有吉 真、立石 周平、小岩井 祥、高久 薫子、長井 賢一郎、中山 香月、関根 正恵、齋藤 康昭、関根 正恵、三田 真史、浜瀬 健司、的場 聖明、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      日本薬学会 第 140 年会
  • [学会発表] 統合失調症患者血漿中 D, L-アミノ酸濃度の解析2020

    • 著者名/発表者名
      関根 正恵、大西 穂ノ佳、小山内 美音、尾関 祐二、藤井 久彌子、片根 真澄、齋藤 康昭、宮本 哲也、秋山 一文、下田 和孝、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      日本薬学会 第 140 年会
  • [学会発表] 超好熱菌 Thermotoga maritima におけるセリンラセマーゼホモログの機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      宮本 哲也、齋藤 康昭、関根 正恵、片根 真澄、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      日本薬学会 第 140 年会
  • [学会発表] 線虫の適応的な採餌行動を調節する D-セリンと NMDA 受容体2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤 康昭、宮本 哲也、関根 正恵、片根 真澄、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      日本薬学会 第 140 年会
  • [学会発表] 低濃度鉛曝露によるラット海馬中 D, L-セリンへの影響2020

    • 著者名/発表者名
      大森 由紀、上窪 裕二、関根 正恵、松川 岳久、小林 桃子、武藤 剛、横山 和仁、角田 正史、片根 真澄、齋藤 康昭、宮本 哲也、加藤 くみ子、本間 浩、堀口 岳剛
    • 学会等名
      第 90 回 日本衛生学会学術総会
  • [学会発表] Exploring D-aspartate and D-serine cerebral metabolism in four mouse models of autism spectrum disorder2019

    • 著者名/発表者名
      Tommaso Nuzzo, Daniela Punzo, Mattia Miroballo, Masumi Katane, Masae Sekine, Yasuaki Saitoh, Arianna De Rosa, Anna Di Maio, Martina Garofalo, Francesco Errico, Alessandro Gozzi, Jean Pierre Mothet, Hiroshi Homma, Alessandro Usiello
    • 学会等名
      IDAR 2019 (The 4th International Conference of D-Amino Acid Research)
    • 国際学会
  • [学会発表] Chracterization of putative D-amino acid aminotransferase in Arabidopsis thaliana2019

    • 著者名/発表者名
      Masae Sekine, Yo Seijo, Mio Funakoshi, Masumi Katane, Tetsuya Miyamoto, Yasuaki Saitoh, Kumiko Sakai-Kato, Hiroshi Homma
    • 学会等名
      IDAR 2019 (The 4th International Conference of D-Amino Acid Research)
    • 国際学会
  • [学会発表] Biochemical characterization of a D-aspartate oxidase from Caenorhabditis elegans: its potential use in the determination of free D-glutamate in biological samples2019

    • 著者名/発表者名
      Masumi Katane, Hisashi Kuwabara, Kazuki Nakayama, Yasuaki Saitoh, Tetsuya Miyamoto, Masae Sekine, Hiroshi Homma
    • 学会等名
      IDAR 2019 (The 4th International Conference of D-Amino Acid Research)
    • 国際学会
  • [学会発表] D-Amino acid metabolism by multifunctional enzymes in bacteria2019

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Miyamoto, Masumi Katane, Hiroshi Homma
    • 学会等名
      IDAR 2019 (The 4th International Conference of D-Amino Acid Research)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Anticipated expression of D-aspartate oxidase since embryonic stage drastically reduces D-aspartate levels in the mouse brain and influences spatial memory at adulthood2019

    • 著者名/発表者名
      Arianna De Rosa, Tommaso Nuzzo, Francesca Mastrostefano, Anna Di Maio, Yasuaki Saitoh, Francesco Napolitano, Masumi Katane, Andrea Isidori, Viviana Caputo, Maria Egle De Stefano, Hiroshi Homma, Alessandro Usiello, Francesco Errico
    • 学会等名
      IDAR 2019 (The 4th International Conference of D-Amino Acid Research)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Secreted D-aspartate oxidase functions in C. elegans reproduction2019

    • 著者名/発表者名
      Yasuaki Saitoh, Masumi Katane, Tetsuya Miyamoto, Masae Sekine, Kumiko Sakai-Kato, Hiroshi Homma
    • 学会等名
      IDAR 2019 (The 4th International Conference of D-Amino Acid Research)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 統合失調症患者における D, L-アミノ酸2019

    • 著者名/発表者名
      関根 正恵、大西 穂ノ佳、小山内 美音、尾関 祐二、藤井 久彌子、齋藤 康昭、宮本 哲也、片根 真澄、秋山 一文、下田 和孝、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      第 63 回 日本薬学会 関東支部大会
  • [学会発表] シロイヌナズナにおける推定 D-アミノ酸アミノトランスフェラーゼの解析2019

    • 著者名/発表者名
      関根 正恵、舩越 美緒、楊 晴如、片根 真澄、齋藤 康昭、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      第 92 回 日本生化学会大会
  • [学会発表] 超好熱菌 Thermotoga maritima における多機能型酵素による D-アミノ酸生合成2019

    • 著者名/発表者名
      宮本 哲也、松浦 美帆、吉田 真梨愛、齋藤 康昭、関根 正恵、片根 真澄、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      第 92 回 日本生化学会大会
  • [学会発表] 超好熱菌 Thermotoga maritima における多機能型酵素における D-アミノ酸代謝2019

    • 著者名/発表者名
      宮本 哲也、齋藤 康昭、関根 正恵、片根 真澄、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      第 43 回 白金シンポジウム
  • [学会発表] 線虫の生殖における分泌型 D-アスパラギン酸オキシダーゼの役割2019

    • 著者名/発表者名
      齋藤 康昭、宮本 哲也、関根 正恵、片根 真澄、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      第 43 回 白金シンポジウム
  • [学会発表] ヒト血漿中 D, L-アミノ酸の解析2019

    • 著者名/発表者名
      関根 正恵、片根 真澄、齋藤 康昭、宮本 哲也、加藤 くみ子、本間 浩
    • 学会等名
      第 43 回 白金シンポジウム
  • [備考] 北里大学薬学部教員紹介ページ(片根真澄)

    • URL

      http://kerid-web.kitasato-u.ac.jp/Profiles/38/0003778/profile.html

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公開日: 2021-01-27  

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