研究課題
本研究の目的は、遊離の D-グルタミン酸(D-Glu)の合成活性を有する酵素として最近同定した、ラット Glu ラセマーゼ(L-Glu と D-Glu の相互変換を触媒する酵素)の性質・機能の詳細を解明することである。本研究の研究計画は、(1)大腸菌で発現させて精製したラット組換え Glu ラセマーゼを酵素表品として用いて、本酵素の酵素学的性質・機能を解析することと、(2)哺乳類由来の培養細胞株を用いて、本酵素が細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を解析することの 2 つに大別される。2018 年度には、主に(1)の研究を進め、本酵素のオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、および補因子要求性を明らかにした。2019 年度には、前年度に引き続き(1)の研究を進め、本酵素の至適 pH、至適温度、および動力学定数を明らかにした。さらに、(2)の実験も進め、本酵素を安定的に高発現するヒト由来培養細胞株を樹立した。最終年度である 2020 年度には、上記の樹立した細胞株を用いて、本酵素が細胞内において D-Glu 合成酵素として機能しているかどうかを解析した。また、D-Glu 以外のアミノ酸含量に与える影響も解析した。具体的には、細胞を定法に従って一定期間培養し、細胞および培養上清を回収した。この際、回収した細胞はすみやかに破砕した。引き続き、メタノールを用いた除タンパク後、遠心減圧乾固した。その残渣に含まれるアミノ酸含量を、高速液体クロマトグラフィーを用いた分離・検出法により定量した。本研究結果から、ラット Glu ラセマーゼが細胞内において D-Glu 合成酵素として機能していることが明らかになった。また、L-セリンおよび L-スレオニンの脱水による分解反応を触媒する L-セリン/L-スレオニンデヒドラターゼとしても機能していることが明らかになった。
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