研究課題
多様な糖鎖構造が細胞表面に発現し、様々な細胞機能を制御している。糖鎖構造・量は細胞が置かれた環境、状態に応じて刻々と変化するがその発現制御機構に関しては不明な点が多い。糖鎖は、糖転移酵素が糖ヌクレオチド(ドナー)とアクセプター(糖タンパク質、糖脂質)を用いて生合成する。申請者は糖ヌクレオチドの代謝に注目し、糖鎖代謝制御機構の解明を目指してきた。その中で、単糖の一つ:N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が糖脂質Gb3の発現量制御に関与することを見出してきた。GlcNAcはGb3の構成糖ではないため、ドナーの量による影響ではないため、単糖による全く新規の糖脂質代謝制御機構の存在が示唆された。GlcNAcの代謝を追う上で、細胞内のタンパク質翻訳後修飾「O-GlcNAc化」の状態が、糖脂質Gb3の発現と強い相関が見出された。細胞内タンパク質のO-GlcNAc化を制御する、O-GlcNAc転移酵素、O-GlcNAcase、GFATといった酵素の発現抑制により、大きくGb3の発現量が変動することから、Gb3合成に関わるタンパク質の発現、局在、活性の制御にO-GlcNAc化が関与していることが示唆された。また、O-GlcNAc化を変動させると、糖鎖の構成糖:シアル酸の代謝に関わる酵素の発現、細胞内局在が大きく変動することを新たに見出し、O-GlcNAc化が糖鎖制御に大きく寄与することがわかった。各種糖鎖関連酵素に対するO-GlcNAc化の影響・その分子機構を多角的に検証している。
3: やや遅れている
所属の変更に伴うセットアップ、マネジメント業務量の増加、体調不良により、研究推進が遅れた。
これまで未発表だった結果を早期にまとめて論文化を行う。計画に関して大きな変更はなく、発表に際して、補うべき点に集中した研究を行う。
所属変更に伴いマネジメント業務量の増加によって研究遂行が遅れた。また、体調不良(パニック障害)によって、一時的に業務を抑制したことによって、当該年度の研究計画を変更し、蓄積したデータのまとめに集中したため
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Biochim Biophys Acta Mol Cell Biol Lipids.
巻: 1866(9) ページ: 158972-
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Brain Pathol.
巻: 31(5) ページ: 12951
10.1111/bpa.12951.