昨年度までに本研究課題であるERネットワーク構造の変化によりCOPIIタンパク質の機能が調節されることを示唆する可能性を示唆するデータを得られている。本年度もその分子メカニズムを解明するための実験を行なった。 Sec16L1089P発現細胞は高温条件下で致死となる。しかしERネットワーク構造が破壊されたrtn1/ yop1欠損細胞ではその生育致死性が抑制される。この作用機序を調べるためにrtn1/ yop1欠損による致死抑制効果を阻害する因子の探索を行ったところSed4を同定した。ER膜タンパク質であるSed4はSec16と相互作用することが長年知られている。その機能は未知であるが、Sec4がER exit site (ERES)に局在することを見出していた。本年度はSec12と細胞質領域を交換したSed412N変異体はERESに局在しないことを明らかにした。Sec12はSed4と細胞質領域に高い相同性を示す一方ERESに局在しない。Sed412Nの局在を詳細に調べるとシート構造には局在せず小胞体膜の曲率の高い領域のみに局在することを発見した。またこの性質はSed4のER内腔領域の全体もしくは複数の部位に担われることを明らかにした。以上の結果はER膜構造によりSed4が機能制御され、その結果相互作用因子であるSec16の機能も調節される可能性を示唆する。 加えてER膜構造によるCOPIIサブユニット間相互作用の調節を示唆する生化学的なデータも得られていた。この調節作用と小胞形成反応の関連を生化学的に調べるために、マイクロソームから小胞を形成させる再構成実験を行なった。精製COPIIタンパク質ならびにネットワーク構造が破壊されたER膜を含むマイクロソーム画分を調整し小胞形成反応を行なった。しかし実験条件のさらなる検討が必要であることが明らかとなり結論を得るまでには至らなかった。
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