研究課題/領域番号 |
18K06128
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘泰 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50546629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホスホリパーゼA2 / 脂肪細胞のベージュ化 / エネルギー代謝 / メタボリックシンドローム / リン脂質 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
本研究では、リン脂質代謝酵素ホスホリパーゼA2 (PLA2) 分子群のうち、特に細胞外分泌性酵素sPLA2を切り口として、細胞外リン脂質代謝によるエネルギー代謝制御の新機軸の創成を目指すため、2種のsPLA2 (sPLA2-IID, sPLA2-IIE)とそのクリアランス受容体PLA2R1について、それぞれの欠損マウスを用いて脂肪細胞ベージュ化の調節機構を解析するとともに、そのヒトへの応用展開を試みる。 当該年度はsPLA2-IIDが動員する脂質代謝物を同定するために脂肪組織のリピドミクスを行った。Pla2g2d欠損マウスでは対照マウスと比較して、脂肪組織中の高度不飽和脂肪酸 (PUFA) が減少していた。Pla2g2d欠損マウスにω3脂肪酸を補充すると、表現型がレスキューされるか確かめた。Control dietを与えた群では、Pla2g2d欠損マウスの体重は対照マウスより有意に増加したが、ω3 rich dietを与えた群は体重が増加しにくく、Pla2g2d欠損マウスと対照マウスの間で差が見られなくなった。さらに、Control diet群の皮下脂肪組織ではω3アゴニストの投与によりUcp1発現がPla2g2d欠損マウスで有意に減少した。しかしながら、ω3 rich dietを与えるとUcp1が誘導され、Pla2g2d欠損マウスと対照マウスの間で差がなくなった。このことから、Pla2g2d欠損のフェノタイプはω3脂肪酸の補充によりレスキューされることが確かめられた。 またPla2r1欠損マウスに寒冷刺激を行うと、Pla2r1欠損マウスでは脂肪組織におけるUcp1のmRNA発現が増加し熱産生が亢進されていることを見出した。これはPla2g2d, Pla2g2e欠損マウスとは逆の表現型を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
sPLA2-IIDが正常時の脂肪組織においてω3高度不飽和脂肪酸(PUFA)を動員し、ω3 脂肪酸を認識する受容体であるGPR120を介して脂肪組織の炎症を抑制するとともに、脂肪細胞のベージュ化を促進してエネルギー消費の亢進に寄与することを見出しすことができたためおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はsPLA2-IIE欠損マウスの脂肪組織のリピドミクスを行い、責任脂質を同定し、その脂質の機能を明らかにする。またsPLA2のクリアランス受容体としてのPLA2R1の代謝調節機構を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた実験に関わる消耗品の購入に変更が生じたため。
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