研究課題
本研究では、リン脂質代謝酵素ホスホリパーゼA2 (PLA2) 分子群のうち、特に細胞外分泌性酵素sPLA2を切り口として、細胞外リン脂質代謝によるエネルギー代謝制御の新機軸の創成を目指すため、2種のsPLA2 (sPLA2-IID, sPLA2-IIE)とそのクリアランス受容体PLA2R1について、それぞれの欠損マウスを用いて脂肪細胞ベージュ化の調節機構を解析するとともに、そのヒトへの応用展開を試みる。昨年度までに全身性のPla2g2e欠損マウスに寒冷暴露ならびにβ3 アドレナリン受容体作動薬 (CL316,243)を投与すると、対照マウスと比べPla2g2e欠損マウスの白色脂肪組織のUcp1発現が減少することを見出している。当該年度はPla2g2e欠損マウスの鼠径部の白色脂肪組織より採取した前駆脂肪細胞に、成熟脂肪細胞へ分化誘導する培地を加え6日間培養し、そこにCL316,243を添加し、24時間後の白色脂肪細胞のUcp1発現を定量PCRにより調べた。その結果、対照マウス由来の白色脂肪細胞にβ3アドレナリン受容体アゴニストを添加すると、Ucp1の発現が有意に増加したが、Pla2g2e欠損マウス由来の白色脂肪細胞では、Ucp1発現の増加が抑えられた。in vivo, in vitroの解析から、sPLA2-IIE欠損により白色脂肪細胞のベージュ化が抑制されることが明らかとなった。 sPLA2-IIEが動員する脂質代謝物を同定するために寒冷刺激を行った白色脂肪組織のリピドミクスを行った。Pla2g2e欠損マウスでは対照マウスと比較して、白色脂肪組織中の遊離脂肪酸が減少していたが、リゾリン脂質については両者の間で差は認められなかった。sPLA2-IIEが動員する遊離脂肪酸が直接熱産生に影響を及ぼしている可能性、もしくは脂肪酸代謝産物の変化が影響している可能性が考えられる。
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