研究実績の概要 |
ミトコンドリアを選択的に分解するミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、酵母からヒトまで保存されたミトコンドリアの品質管理機構である。酵母においてマイトファジーが誘導されると、ミトコンドリア外膜タンパク質Atg32がカゼインキナーゼ2(CK2)によってリン酸化され、それに続くAtg32の集積する部位が分解標的として切り離され、最終的に液胞内で分解される。本研究では、マイトファジー誘導前後におけるAtg32のリン酸化制御機構の解明を目的としている。 2018年度までに、CK2と競合しAtg32の脱リン酸化を介してマイトファジーを抑制するプロテインホスファターゼPpg1とその結合パートナーであるFar複合体(Far3、Far7、Far8、Far9、Far10、Far11)を見出した(Furukawa et al., Cell Rep, 2018)。2019年度は、Ppg1とFar複合体の詳細な解析を行い、(1)Far複合体はミトコンドリアと小胞体の両方に局在するが、Atg32の脱リン酸化にはミトコンドリア局在型のみが関与すること、(2)Ppg1のホスファターゼ活性がFar複合体のアッセンブリーに必須であること、(3)Atg32とFar複合体の結合と解離がマイトファジー制御において重要であることを見出した。 2020年度は、上記の内容を論文投稿し、リバイスの過程で上記(3)についてさらなる証明を行った。第一に、Far複合体のうち、Far8がAtg32と直接結合することをin vitroの実験系で明らかにした。さらに、Far8とAtg32を強制的に連結させるとPpg1依存的にマイトファジーが強く抑制されたことから、マイトファジー誘導時にFar複合体がAtg32から解離することがAtg32のリン酸化の必須条件であることを明らかにした。本研究成果は、eLife誌に掲載された。
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