研究課題/領域番号 |
18K06130
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宮田 真路 東京農工大学, 農学部, 准教授 (60533792)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロテオグリカン / ヒアルロナン / ペリニューロナルネット / 細胞外マトリクス |
研究実績の概要 |
中枢神経系の細胞外マトリクスは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) やヒアルロナンといった糖鎖に富む特徴を示す。特定の神経細胞周囲にはペリニューロナルネット (PNN) と呼ばれる特徴的な細胞外マトリクス構造が形成される。最近の研究からPNNは、神経回路の安定化や記憶の維持に必要であることが明らかとなっており、老化に伴う脳機能の低下とPNNとの関連が注目されている。そこで本研究では、PNNを構成する分子群の生化学的性質を詳細に解析することで、これまで不明であった老化に伴うPNNの変化を分子レベルで解明することを目指した。 まず、成体(3ヶ月齢)および老齢(18ヶ月齢)マウスの脳に存在するPNN構成分子群を溶解度の違いに基づき、水溶性、界面活性剤可溶性、不溶性の3画分に分画し、それぞれについてCSPGとヒアルロナンの解析を行った。ヒアルロナンは脳の老化に伴って不溶性画分に存在する割合が有意に減少し、水溶性および界面活性剤可溶性画分に存在する割合が増加することが示された。ヒアルロナンの溶解度の増加に伴い、その分子量は低下していた。また、ヒアルロナンと同様に、コンドロイチン硫酸も老化に伴い溶解度が上昇することが示された。そこで次に、複数のCSPGの中で老化に伴う溶解度の変化を示す分子を探索した。その結果、特にアグリカンが老化に伴い不溶性画分から可溶性画分に顕著に移行することが示された。さらに、老齢脳からはタンパク質全長のアグリカンに加えてコアタンパク質の分解断片が検出され、この分解断片は水溶性画分に存在していた。以上の結果から、脳内では加齢に伴いアグリカンのコアタンパク質の分解が亢進し、ヒアルロナン結合能を失ったアグリカンが水溶性画分に移行することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老齢マウス脳において、これまでに知られていないアグリカンの分解断片が蓄積することを見出すことができたため。これは、加齢に伴うペリニューロナルネットの劣化の原因と考えられる。また、老齢脳ではPNNの凝集性が低下することで、シナプス安定化におけるPNNの機能が損なわれる可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに見出したアグリカンの分解断片の性質を明らかにする。そのために、この分解断片を精製し質量分析装置を用いて、切断部位を同定する。そして、分解に関わるプロテアーゼを同定する。さらに、このプロテアーゼを阻害することで、加齢に伴うアグリカンの分解、および、ペリニューロナルネットの劣化を防ぐことができるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初に設備備品費として遺伝子導入装置を計上していたが、この装置は汎用性が高く本科研費とは別の研究費を充てることがきたため、次年度使用額が生 じた。次年度使用額は、今年度の研究で明らかにしたアグリカン断片の同定のための質量分析解析に用いる試薬等の購入に充てることとする。そのた め、研究全体としては当初の計画通りの実験内容を実施する予定である。
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