中枢神経系の細胞外マトリクスは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンやヒアルロン酸といった糖鎖に富む特徴を示す。特定の神経細胞周囲にはペリニューロナルネット (PNN) と呼ばれる特徴的な細胞外マトリクス構造が形成される。PNNはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、および糖タンパク質からなる不溶性の凝集体であり、神経可塑性の低下に関わる。ヒアルロン酸はその分子サイズにより多彩な機能をもつため、組織サンプルから微量のヒアルロン酸を単離しその分子量を解析する手法の確立を目指した。 現在、ヒアルロン酸のサイズ分布分析に広く用いられている方法は、ゲル電気泳動後にStains-Allと呼ばれるカチオン色素で染色する方法である。しかしながら、この色素ではヒアルロン酸と他のグリコサミノグリカンを区別することができない。サイズ排除クロマトグラフィーに基づく方法も確立されているが、しばしば手間と時間がかかり、比較的多量のヒアルロン酸を必要とする。本研究では、ヒアルロン酸をビオチン化ヒアルロン酸結合タンパク質とストレプトアビジン結合磁気ビーズを用いて単離する手法を確立した。熱変性後に、ヒアルロン酸はアガロースまたはアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、Stains-All染色で検出した。本方法の最大の利点は、1つのゲルで複数のサンプルのヒアルロン酸の大きさを同時に比較できることである。この方法を用いて、PNNを構成するヒアルロン酸は、可溶性のヒアルロン酸に比べて分子量が高いことを明らかにした。
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