研究課題/領域番号 |
18K06132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
前濱 朝彦 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (40322755)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核小体ストレス / リボソームストレス / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、PICT1を基点とした核小体ストレス応答の分子機構の解明を目指すとともに、核小体ストレス応答を担う分子の遺伝子改変マウスを作成してがん制御との関連を明らかにすることを目標としている。 これまでの私達の研究から、非ストレス下ではPICT1は安定化因子Xと結合することで安定化されているが、核小体ストレス下ではXがPICT1から解離することでPICT1が不安定化し分解されることを明らかにしている。本年度の研究では、まずRT-qPCRを用いて核小体ストレスによるrRNA前駆体の経時変化を検討し、ストレス暴露後4-6時間でrRNA前駆体がほぼ消失することを見出した。一方、PICT1-X間結合の解離はストレス暴露後約6時間で起こることから、rRNA前駆体の減少がPICT1-X結合の解離に先行して起こると考えられた。そこでPICT1-X間結合のRNA依存性を検討したところ、免疫沈降によるPICT1-X複合体検出において、RNase処理(RNAの分解)がPICT1-X間の結合活性を上昇させることが観察され、予想に反して、RNAはPICT1-X間結合に対してむしろ抑制的に作用していると考えられた。さらに、(1) rRNA前駆体がほとんど存在しない核小体ストレス暴露後8時間の時点においてXの細胞内局在が変化しないこと、(2)この時点でPICT1の崩壊が始まること、(3) PICT1のC末端側のリジン残基の変異がPICT1の崩壊を抑制すること、などからPICT1-X結合はPICT1あるいはX上の未知の翻訳後修飾によって制御されている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究では、核小体ストレスによるrRNA前駆体(核小体内)の動態(RT-qPCRやノーザンブロット)、PICT1-X結合(免疫沈降法、Fluoppi法、GSTプルダウン法)、PICT1やXの細胞内局在(免疫染色法、蛍光タンパク質タグによる検出法)を解析する手法を確立した。これらの手法を用いることで、ストレス暴露時の各分子の経時変化解析が可能となり、ストレス応答シグナルの流れを明らかにすることができた。また核小体ストレスによるPICT1-X結合の変化はRNAよりもむしろ翻訳後修飾による直接制御を受けている可能性が高いことを明らかにするなど、概ね計画の通り研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画に従い、以下の点を中心に研究を進める。 (1)PICT1-X結合に関わるRNA分子や翻訳後修飾の同定・解析。特に分解抵抗性を示す変異部位のリジン残基を中心に解析を進める。 (2)PICT1およびXに結合するRNA分子の包括的解析。またその核小体ストレスによる変動。 (3)X遺伝子欠損マウス、X遺伝子トランスジェニックマウスの作成。
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