研究実績の概要 |
本研究では、PICT1を基点とした核小体ストレス応答の分子機構の解明を目指すとともに、核小体ストレス応答を担う分子の遺伝子改変マウスを作成してがん制御との関連を明らかにすることを目標としている。 これまでの研究で、非ストレス下ではPICT1は安定化因子Xと結合することで安定化されているが、核小体ストレス下ではXがPICT1から解離することでPICT1が不安定化し分解されることを明らかにしている。本年度の研究では、まずMycタグを付加したPICT1を安定発現するU2OS細胞を用いて、抗Mycタグ抗体によるRNA-IPを行い、核小体ストレス(アクチノマイシンD, 5 nM, 8 h)によってPICT1との結合が変化するRNA分子の同定を試みた。その結果、PICT1と結合し、かつ核小体ストレスに応じてPICT1との結合が減弱する複数のRNA分子を見出した。次に、これらのRNA分子のうち、PICT1-X結合に関わる分子の探索を、大腸菌を用いて発現・精製したPICT1およびXのリコンビナントタンパク質によるPICT1-X結合アッセイを用いて行った。その結果、前記のRNA分子の一つがPICT1-X結合を促進することを新たに見出した。また、このRNA分子は核小体ストレス暴露後4-6時間でその量が著しく減少することを見出した。以上の結果から、(1) PICT1-X結合はある種のRNA分子との結合によって維持されていること、(2) 核小体ストレス下ではこのRNA量が減少することでPICT1-X結合の解離がおこること、(3) Xの解離によってPICT1が不安定化し、その後のp53活性化につながることが明らかになった。さらに、in vivoにおけるXの役割を明らかにするため、遺伝子Xのfloxマウスを作成した。
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